当時からコンビ名は「髭男爵」だったが、髭面でもないツルッとした顔で、衣裳も私服寄りのカジュアルな格好。

「そうか、名前通りにすればいいのか!」

 灯台もと暗しと言わんばかりに、この出来事をきっかけにコスプレキャラ芸人化が進行する。

 ネタの方向性も、「サーベル(西洋の剣)漫才」「バルコニー漫才」「チェス漫才」と文字面では何が何やら分からぬだろう変遷を重ね、最終的に「乾杯漫才」に辿り着いた。筆者の芸名一つとってもそれまでの「ピュアぞー」から「山田ルイ53世」と変わっている。これだけでも、右往左往ぶりが分かるだろう。

 一般的に、努力というのは、明確な目標があり、それに向かって計画的に頑張り、出来なかったことが出来るようになる、というイメージ。

 筆者の場合、努力とは、もがき。溺れないようにジタバタしていた、という認識である。掴んだ藁に思いのほか浮力があっただけの話なのかもしれない。

「意識が低い」なりに
仕事の幅を拡げてきた

“一発”以降は、ラジオやナレーション、文筆業など仕事の幅も拡がったので、傍から見れば、「色々、努力している」と見てくださる向きもあるやもしれぬが、自分では行き当たりばったりで食い繋いでいるといった感覚。供されたものを綺麗に食べる、と心がけているだけで、自分から幅を広げようと仕掛けたことは一度もない。

 通常、芸能人がこんな仕事をしたいと動くときは、もっとあからさまだ。資格を取りました、○○のアンバサダーに任命されました、料理にハマってます、キャンプ最高!

 果ては、霊感がある、視えます等々、これまでさんざん見てきた。これらは要するに、そういう類いのオファーを下さい、というアピールに他ならない。

「○○県が大好き!」というのもあるが、筆者は山梨県のレギュラーラジオを担当することになった際、第1回目にして、「ほうとうのかぼちゃがどうも苦手で……」と余計な本音を披露してしまった。

 筆者はおそらく、「意識が低い」部類、いや、意識を失っているといっても過言ではない。