恐ろしいのは、店主の記憶違い、ではない。

 それに呼応し、麺の手触りやスープの香り、額を伝う汗といった生々しい映像が蘇った、いや実際はしてもいない体験が再生された自分の脳味噌である。

 当時一視聴者として自宅のテレビで眺めていたモノを、自分が出演していたように再構築してしまっていたわけだ。

 今、読者の隣に居る、友人や恋人も、もしかすると本当は初対面の方かもしれませんね……。

……とタモリ御大か、喪黒福造でも登場しそうな締め方をしたが、要するに、人間関係など、その程度の話なのだ。

なんでも言い合える関係は
本当に必要なのか

「社会人になって働いていると、新しい友達ができなくなった」

「学生時代の友人と疎遠に」

「親友と呼べる人間は、片手で足りる程度で……」

 など人間関係に関する悩みはよく耳にする。

 だが、そもそも友達や「親友」など、作る必要があるのだろうか。

 もとより、ママ友やパパ友といった類いの知り合いを一人も持たぬ筆者。コチラがあずかり知らぬ内に、パパ友のLINEグループが出来ていようが、休日にBBQが行われていようが、別になんとも思わない。むしろ、妻経由で、「○○ちゃんのパパが、パパ友だけでLINEグループ作りません?って言ってきてるけど……」

 と打診されたときも「やめとくわ!」と即座に遠慮したくらい。小学校や幼稚園で行事があっても、いつも一人でこっそり見に行っては一人で帰るだけ……別に弊害はない。

 友達関係に限らず、恋人、先輩後輩……昨今は「なんでも言い合える関係」が美徳とされがちだが、「言えない、言わない」という距離感が、互いのストレスを軽減するケースもある。

大人同士の人間関係は
足湯くらいがちょうどいい

 いつだったか、筆者がとある新聞で受け持っている「人生相談」で、50代の女性からこんなお悩みが届いた。

 子ども夫婦がどちらも肥満体で、実の息子には、「痩せなさい!」と言えるが、義理の娘には言いにくい。健康で長生きしてほしいし、彼女は背も高いので痩せたらとても可愛くなるのに……といった内容である。