EVモーターズ・ジャパン本社EVモーターズ・ジャパン本社(東京商工リサーチ撮影)

日本初の商用電動車(EV)メーカーとして注目された(株)EVモーターズ・ジャパン(福岡県北九州市、以下EVMJ)が4月14日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は56億8500万円だった。設立以来、ニュービジネス関連で数々の賞を受賞し、地元ベンチャーの旗手として期待を集めたEVMJは、製造工場を持たないファブレスメーカーで、生産は中国メーカーに委託していた。飛躍の象徴は、一般入場者約2558万人を集めた大阪・関西万博のシャトルバスだった。会場内や近隣の駐車場を結ぶために大阪メトロが190台のEVバスを導入した。ところが、万博期間中に事故や不具合が相次ぎ、事態を重く見た国土交通省が検査に動き、全国で販売した317台の3割以上でブレーキホースなどの損傷が確認された。国交省は国や自治体からの補助金約43億円の返還を求める方針を示し、大阪メトロは契約解除と代金約96億円の返還を求めている。(東京商工リサーチ 北九州支店情報部 緒方賢治)

明るいはずだったEVMJの将来

 福岡県北九州市は、官営八幡製鉄所の発祥の地で、かつては日本経済の黎明期を支えた。現在はスタートアップやベンチャー企業の集積地として知られる。工業都市で製造業が盛んな「ものづくり」の地域性に加え、北九州市は「日本一起業家に優しいまち」をスローガンに産学官連携の起業支援や企業誘致に力を入れている。

 EVMJは2019年4月、その北九州市で設立された。大手エンジニアリングメーカー出身の創業者らの知見を生かし、独自のリチウムイオン電池の制御技術を応用したモーター制御システムをコア技術に据えた。これをもとに、低電力消費率、長寿命を兼ね備えた量産型の商用EV車両の開発・製造を目指した。

EVモーターズ・ジャパン車両EVモーターズ・ジャパン車両(東京商工リサーチ撮影)

 設立当初からEVMJが持つ技術とポテンシャルは高く評価された。脱炭素社会の実現に向けた新事業や技術が時代の流れに合致した点も大きく、うまく潮流に乗れば国をあげてのサポートが見込める分野でもあった。

 2022年6月に「第19回九州ニュービジネス大賞」の最高賞を受賞したのを手始めに、同年12月「ニッポン新事業創出大賞(アントレプレナー部門)」(公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会主催)で最優秀賞の中小企業庁長官賞を受賞した。この他にも数々のビジネスコンテストで受賞し、ベンチャーキャピタルや大手企業から地場企業まで、多くの企業が増資引き受けに応じた。まさにEVMJの将来は明るいはずだった。