大規模な投資をしたのは
物流システムの構築だけ
特に重点的に投資をしたのが、物流センターです。
アスクルの大きな魅力のひとつは、社名にもしたように、「明日来る=注文翌日に商品が届く」ことです。「明日来る」といいながら、明後日来る、5日後に来るとなれば、お客様はアスクルに失望し、離れていってしまいます。
注文が少ない頃は、物流センターがそれほど整備されていなくても、多少残業をすれば何とか対応できましたが、注文が増えれば、そういうわけにもいきません。そこで、物流センターの増強と最先端の物流システムの構築に投資したのです。
まず必要だったのは、物流に関するノウハウです。そこで、最先端の物流のノウハウを持った優秀な人材を採用しました。そのうえで、物流センターを急ピッチで増やしていきました。その時々の売上に対して、はるかにキャパシティの大きな物流センターを開設していったので、経営陣のなかには心配する人もいましたが、私はそれでいいと考えていました。
物流センターの稼働率が低いことよりも、物流センターがパンクして翌日配送ができなくなるほうが、はるかに問題だからです。
物流センターを全国各地に開設すると、お客様への配送距離が短くなるので、配送コストが下がります。それに加えて、翌日配送も、より確実になります。すると利便性があがるので、お客様がさらに増え、投資を短期で回収できるという、良い循環に入りました。
大胆な資金投入は勝算が
見えてからでも遅くはない
以上の経験から、事業を立ち上げたばかりの頃は、お客様のニーズがあると確信できるまで、投資を抑えたほうがいいと私は考えています。
『起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方』(岩田彰一郎、PHP研究所)
お金をかけて営業活動や宣伝をしなければお客様を獲得できないのであれば、そのビジネスモデルでは、創業期だけでなく、その後も、大きな顧客獲得コストがかかり続けるかもしれません。そのコストを抑える方法を見つけられなければ、その事業は大きく成長しないでしょう。
起業家は惚れ込んでいる自分の事業に資金を投じたくなるものですが、資金を大きく減らしてしまうと、失敗した時に、別の事業を試すこともできなくなります。
アスクルが途中からライバルメーカーの商品も扱うようになって急成長したように、勝てるビジネスモデルは試行錯誤のなかで見つかるものです。それが見つかるまで、致命傷を負わないように挑戦するのが、経営者の力だといえます。
成長するビジネスモデルだと外部に自信を持って示せるようになれば、銀行から融資を受けるなど、資金調達もしやすくなるでしょう。大胆に資金を投じて赤字にするのは、それからでも遅くないと思います。







