スタートアップのバイブルとして名高い『起業のファイナンス』シリーズの最新刊として、『起業のコーポレート業務』が発売されました。オフィスの探し方や社会保険への加入、PR、反社対応、M&A・IPO準備など、総務・経理・労務・法務とEXITに関する全てをカバーする「スタートアップの実務大全」とも言える1冊で、スタートアップ以外の企業のコーポレート部門の人にも大いに役立つ内容となっています。
この連載では、主に同書の「コラム」を公開していきます。第1回は、スタートアップに必須の「管理部長とCFO」についてです。
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CFOは管理部長の上位概念ではない
2010年代は、スタートアップの資金調達(ファイナンス)の大型化が進んだ10年間でした。
それまでは1億円の資金調達ですら滅多にない、という状況でしたが、この期間に数億円はザラ、なかには数十億や百億円を超すファイナンスも出てきています。
これらをリードしていたのは、外資系投資銀行やPE(プライベート・エクイティ)ファンド出身のCFOです。彼らは未上場市場における主な資金の出し手であるVCに対して、前職で培ったノウハウを活かし、魅力的なエクイティストーリーを伝え、資金を引き出していきました。
結果、スタートアップCFOは経歴もピカピカで目立つファイナンスを実行するのがステレオタイプとなり「攻め」のイメージが定着しました。
一方で、スタートアップにおいて、管理部長は「守り」担当で、ガバナンス構築・運用など一見目立たない業務をこなし、リスクをコントロールする存在、というイメージです。
そして、「CFOは管理部長の上位概念」である、という風に思われている節もあります。
スタートアップは資金調達というユニークなイベントが定期的にあり、これが対外的にわかりやすいマイルストーンになっています。そしてその中心となるCFOが目立つ傾向があるのですが、四六時中資金調達をし続けているわけではありません。
むしろ、資金調達をしていない時期にきちんと守りを固められるかどうかが大事で、1人で2役できるのが理想なのですが、『起業のコーポレート業務』で説明している通り、カバー範囲は多岐にわたり、それぞれ専門性も高いため、1人で完璧にマネジメントするのは困難です(ごく稀にそれができる超人はいますが……)。
「CFOは管理部長の上位概念ではなく、守備範囲や役割の違いでしかない」というのが著者が管理部長とCFOの1人2役をこなしてみた上での感想です。1年くらいは苦労しながらやってみましたが、限界が来たので弱いところをカバーしてもらえる方を採用し、二人三脚の体制を取りました。
また、アーリーステージから数十億円を超すような超大型の資金調達をする必要があるケース以外は、CFOではなく、まずは管理部長を採用して粛々と守りを固めるほうが、結果として組織も事業も安定するでしょう。
スタートアップ経営者の「とりあえずCFOを採用したい!」という気持ちはわかりますが、自社のコーポレート業務の整備状況やファイナンスの強度を冷静に見た上で、適切なタイミングで適切な人材を採用し、チーム力をアップすることも大事です。



