成功したほど陥りやすい
「ジレンマ」の正体

 肯定だけに囲まれた環境の最大のリスクは、「自分にとって都合の悪い情報」が入ってこなくなることです。

 心理学では、人は自分の考えを支持する情報ばかりを集め、反する情報を無視しやすいことが知られています。これを確証バイアスと呼びます。やっかいなのは、地位が上がるほど、周囲の人々がこのバイアスを「忖度」という形で後押ししてしまう点です。

 部下は上司に嫌われたくありません。取引先は契約を失いたくありません。だからこそ、本当は伝えるべき懸念や反対意見が、相手の口元で静かに飲み込まれていきます。

 その結果、本来は判断の精度がもっとも高くあるべき立場の人が、いつの間にか「裸の王様」になっていく。私はそうした場面を、決して少なくない回数、目にしてきました。

 承認欲求が満たされ、それで満足してしまう――成功した人ほど陥りやすい、このジレンマこそが、さらなる上昇を止める最大の壁なのです。

富裕層がAIに投げかける
「ある質問」とは?

スマホとAIのイメージ画像写真はイメージです Photo:PIXTA

 ここで、本題に戻ります。さらに上へと登っていく富裕層は、AIにいったい何を聞いているのでしょうか。

 多くの方が想像されるのは、「最も有利な投資先は」「効率のよい節税の方法は」といった問いかもしれません。もちろん、そうした使い方もされるでしょう。

 しかし、私が強く印象に残っているのは、まったく別の種類の質問です。それは、一言で言えば――「この考えの弱点は、どこにありますか」という問いです。

 自分の事業計画、投資の判断、人事の決定。それらをAIに示した上で、「賛成意見はいらない。反対の立場から、問題点だけを挙げてほしい」と求めるのです。