あるオーナー経営者の方は、重要な意思決定の前に、必ずAIに「私がこの判断で見落としている前提は何か」と尋ねると話してくださいました。彼らはAIに「褒めてもらう」ためではなく、「反論してもらう」ために向き合っているのです。

 AIは、相手が富裕層であろうと、その立場や資産に忖度しません。嫌われることを恐れず、契約を失う心配もなく、ただ論理的な反対材料を差し出してくれる。人間関係の中で失われてしまった「率直なフィードバック」を、感情の摩擦なく与えてくれる存在なのです。

 しかも、何度問い直しても、AIは嫌な顔ひとつしません。人に同じ質問を繰り返せば角が立つ場面でも、納得がいくまで問いを重ねられる――これも、富裕層がAIを重宝する理由の一つです。

頭のいい富裕層は
AIの「いい人モード」をあえて解除する

 ここで、読者の皆さまにもそのまま応用できる、具体的な使い方をご紹介します。

 ChatGPTをはじめとする生成AIは、初期設定のままでは「とても感じのよい相談相手」として振る舞います。こちらの考えに同意し、励まし、背中を押してくれる――いわば「いい人モード」で動いているのです。心地よい一方で、これでは先ほどの「肯定だけの環境」と何ら変わりません。

 富裕層が使っているのは、この「いい人モード」をあえて解除するプロンプトです。例えば、こう指示します。

「この計画に賛成しないでください。考えられる穴や問題点、リスクを、できるだけ厳しく指摘してください」

 これだけで、AIの答えは一変します。励ましの言葉は消え、見落としていた弱点が次々と並びます。さらに踏み込むなら、次のような頼み方も有効です。

「私のこの意見について、立場の異なる3人の専門家になったつもりで、それぞれの視点から評価・レビューをしてください」

 経営者、財務の専門家、現場の責任者――視点の異なる複数の評価を一度に得ることで、自分一人では決して見えなかった論点が浮かび上がります。ときには、3人の意見が真っ向から対立することもあります。しかし、その対立こそが、判断を一段深めるための貴重な材料になるのです。