EVの基礎部分はトヨタグループの知見を取り込んでいる

 インタビューの途中だが、ここで少し背景を整理しておこう。e VITARAが採用している電動システムであるeAxleには、BluE Nexus社の技術が用いられている。BluE Nexusは、アイシン、デンソー、トヨタが出資する電動化システムの会社で、出資比率はアイシン45%、デンソー45%、トヨタ10%だ。つまりe VITARAは、EVの基礎部分にトヨタグループの電動化技術の知見を取り込みながら、車両としてのまとめ方はスズキが担う、という成り立ちになっている。

 初めてで不慣れな部分は外の知見を使い、最後に顧客が触れる部分はスズキの思想で仕上げる。ドッカン加速の過激なEVにはしない。重くなり過ぎない。SUVらしい力強さを強調し、過度に"未来"を演出しない。このスパッとした割り切りが、実に"スズキ的"ではないか。

eAxleイメージeAxleイメージ(広報写真)

大:そうですね。EVのシステム的なところでは、トヨタさんの知見が大きかったと思います。一方で、軽量化や小型化はスズキが長年かけて積み重ねてきたところです。今回のe VITARAでも、そこは大事にしています。

 共同開発というと、「どちらがどこを担当したか」とキッチリ分けて考えがちですが、企画も含めてトヨタさんと一緒にやってきました。その中で、それぞれの知見を持ち寄って造り上げた、ということだと思います。

F:なるほど。とてもよく分かりました。

なぜ日本でなく、インドで造るのか?

F:次に生産について伺います。e VITARAはインドで造られています。スズキ初の量産BEVなのだから、「まずは日本で造りました」と言いたくなりそうなものですが、いきなりインド。これはなぜでしょう。

大:日本だけでなく、世界各国へ送り出すクルマだからです。e VITARAは日本だけのクルマではありません。インドはもちろん、欧州や豪州、南米などにも出していきます。そう考えた時に、インドから送り出すのが良いと判断しました。

 理由はいくつかありますが、ひとつはコストです。部品をいろいろなところから集めてくる中で、インドで造れるものはインドで造った方が有利です。現地の工場は生産能力も大きい。日本で造って世界へ出すよりも、インドで造る方が合理的なことが多い、ということです。

 なお同席した広報の井門さんからは、「中東や中南米、アフリカ方面へ輸出する際の距離、つまり輸送コストの面でもインドにはメリットがあります。輸送費もバカにならないので」との説明があった。地図を見れば一目瞭然。日本から世界へ出すよりも、インドを起点にした方が都合の良い地域は少なくない。

F:なるほど。そもそも私の「なぜインドで造るのか」という質問そのものが、もはや時代遅れなのかもしれません。スズキにとってインドは、もはや単なる"海外生産拠点"ではない。世界戦略の中核にある存在であると。

大:はい。インドはスズキにとって非常に重要な拠点です。生産能力も大きいですし、今後さらに増やしていく計画もあります。世界に出していくクルマを造るという意味では、インドは自然な選択肢のひとつです。

 e VITARAはグジャラート州の工場で造っています。そこではフロンクスも造っていて、e VITARAと混流で生産しています。BEVはスズキとして初めてですし、プラットフォームも違います。そこを既存の生産の流れの中でどう造るか。インドで部品もかなり造っています。