FRBを作り変えたいウォーシュ氏、その障壁とはPhoto:Tom Williams/gettyimages

 ケビン・ウォーシュ氏はこの20年間、米連邦準備制度理事会(FRB)の役割と問題点について、多くの講演やポッドキャスト、論説、インタビューで自身の見解を発信してきた。その議長に就任する同氏が何をしようとしているかについて、市場や米政府の間で多くの疑問があるのはなぜか。

 主な理由は二つある。第一に、ウォーシュ氏が引き継ぐ世界は突然変わった。インフレは4年前にピークを付けた後もFRBの目標である2%に戻らず、イラン戦争と関税の影響で再び上昇している。米債券市場とFRBはこの6カ月の間に、利下げを検討する姿勢から利上げを議論する方向にシフトした。

 ウォーシュ氏は1年前であれば、FRBは「失った信頼」を回復する必要があるという主張と、利下げの条件が整いつつあるという主張を両立させられた。だが、イラン戦争によるエネルギーショックが、同氏の構想の軸であるこの二つを相いれないものにしてしまった。

 第二に、昨年ウォーシュ氏が議長就任への道を開いた時、目の前にはドナルド・トランプ大統領という限られた聴衆しかいなかった。トランプ氏は、同氏に従わない人物をFRB議長に指名するという政権1期目の失敗を繰り返すまいと決意していた。ウォーシュ氏は今、別の聴衆を満足させる必要がある。連邦公開市場委員会(FOMC)のテーブルを囲む18人の同僚だ。彼らにはそれぞれ見解と懸念がある。ウォーシュ氏は彼らを選んだわけでも、交代させられるわけでもない。

 ウォーシュ氏の見解は一貫している。FRBに対する信頼を回復し、最終的にトランプ氏が望む低金利を実現するには、インフレを測定・予測する手法を刷新・改良し、FRBが市場への関与を減らし、発言を控えることで道が開かれると同氏は言う。

「同氏は、FRBは裏方に徹するべきで、そうすればこうした批判にさらされる政治空間から距離を置けると考えている」。元FRBのエコノミストで、ウォーシュ氏が初めてFRB理事を務めた時に同氏と働いていたネリー・リアン氏はこう話す。FRBに関するウォーシュ氏の構想は、会合ごとの決定より長期の方向性に焦点を当てているという。