FRBの新議長に就任するケビン・ウォーシュ氏 Photo:AFP=JIJI
5月22日、ケビン・ウォーシュ氏がFRB(米連邦準備制度理事会)議長に就任する。連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「FRB」。8年にわたって議長を務めたジェローム・パウエル氏の後任となるウォーシュ氏を待つのは、インフレ再燃リスクと景気・雇用への配慮を同時に迫られる難しい局面だ。米国の中央銀行FRBの仕組みと歴史から、その重い役割を読み解く。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
日銀とは異なるFRBの仕組み
政策を決める本部、実務を担う地区連銀
今回のキーワードは「FRB(米連邦準備制度理事会)」です。
5月22日、ケビン・ウォーシュ氏がFRB議長に就任する予定です。8年間にわたり議長を務めたジェローム・パウエル氏は、議長職を退くことになります。
FRBは米国の中央銀行と説明されます。ただし、その仕組みは日本銀行とは少し異なります。米国の中央銀行制度は、ワシントンにあるFRBだけで完結しているわけではありません。全米に12ある地区連邦準備銀行、いわゆる地区連銀と一体になって、連邦準備制度を構成しています。
金融政策の方針を決める司令塔はFRBと後述するFOMC(米連邦公開市場委員会)ですが、金融市場に対する日々の資金調節の実務を担うのは、地区連銀の一つであるニューヨーク連銀です。
国債などの売買を通じて市場の資金量を調整し、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートを誘導目標に近づけるための操作も、FOMCの方針に基づいてニューヨーク連銀が実行します。
銀行とのさまざまなやりとりや監督・検査についても、地区連銀が大きな役割を担います。ワシントンのFRBは制度全体を統括し、政策の方向性を決めますが、実務の多くは地区連銀が担っているのです。
金融政策を決める会合が、年8回開かれるFOMCです。FOMCにはFRB理事と地区連銀総裁が参加します。
ただし、政策決定に対する投票権を持つのは、FRB理事7人、ニューヨーク連銀総裁、そしてニューヨーク連銀以外の11地区連銀から輪番で選ばれる4人の地区連銀総裁の計12人です。投票権を持たない地区連銀総裁も会合には参加し、各地域の経済情勢などについて意見を述べます。
FRB理事、議長、副議長は米大統領が指名し、上院の承認を受けて就任します。今回、ウォーシュ氏を指名したのはドナルド・トランプ大統領です。パウエル前議長は、トランプ大統領との間で金融政策を巡るあつれきがあったと報じられてきましたが、そのパウエル氏を8年前に議長に指名したのも、当時のトランプ大統領でした。
FRBには、他の主要中央銀行と比べても特徴的な使命があります。物価の安定は、どの中央銀行にとっても最も重要な責務です。しかしFRBには、それと並ぶ重要な使命が課されています。しかも、物価を安定させようとすると、もう一方の使命の実現の足を引っ張るという、二つは難しい関係にあるのです。
それは何でしょうか。次ページでは、その答えを明らかにするとともに、FRBの設立の経緯、そしてインフレとの戦いの歴史を振り返ります。







