政府は輸出企業をあえて助けず、過剰生産能力の淘汰を進める構えだ。写真は香港の輸出港
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「中国特需は終わった。世界は早めに現実を受け入れ、リスクシナリオを想定したほうがよい」(肖敏捷・SMBC日興証券エコノミスト)

 7月15日に発表された中国の4~6月期の経済成長率は、前年同期比7.5%。1~3月期の7.7%から一段と低下した。

 いまや世界第2位の経済大国である中国の成長減速が、今後の世界経済の下押し要因になるのは間違いない。特に、中国向けの輸出比率が高いオーストラリアやブラジルといった資源国、韓国や台湾などは、大きな打撃を受ける。同様に中国と関係の深いASEANなどのアジア新興国も、成長率の低下は免れ得ない。欧州も中国向け輸出の比率が高く、景気回復の足を引っ張る要因となる。

 一方で、日本をはじめとする多くの先進国では、米国経済が与える影響のほうが大きいため、「米国の景気さえ堅調ならば、ある程度補うことは可能」(牧田健・日本総合研究所マクロ経済研究センター所長)との見方が多い。

 ただし、楽観は禁物だ。中国の成長率は下半期、いっそう減速する可能性が高い。場合によっては7%を切ることもあり得る。

金融危機には至らず

 減速の直接的な要因は、輸出と投資の不振だ。6月の輸出は前年同月比で▲3.1%と急減。露呈した輸出統計の“水増し”が剥落したのも理由の一つだが、そもそも低調な世界経済と、人件費高騰や人民元高による競争力の低下が背景にある。1~6月の都市部固定資産投資も、5月時点から▲0.3%ポイントの低下となった。

 懸念される金融システムの問題は、制御不能な危機にまでは至らない、というのが多くの専門家の見方だ。だが危機は回避できても、政府当局による締めつけで資金供給が絞られる結果、成長を鈍化させる方向に働くのは確実である。