極端な話かもしれませんが、普通の社会人で父親でもある中年男性が、永井荷風のような生き方をしたいと思ったとしても、現実にはまず許されないでしょう。現在、65歳の私でも、そんなことを言い出したら、さすがに周囲に制止されるはずです。

 しかし、70代や80代になり、子供も自立し、配偶者とも互いに独立した生き方ができるようになった(これが意外に難しいのですが)あとであれば、「もういいかげんにしておいたほうがいいんじゃない」と、たしなめられる程度ですむような気もします。京都の花街でのお座敷遊びは、若い人よりもむしろ老人のほうが似合います。

 昔は日本もそういう文化だったのかもしれませんが、欧米では遊びに対して意欲が旺盛な老人はすてきな人と認識されます。

 品格というと誤解されやすいのですが、私は上品な老人や、道徳的な老人をめざすべき、と言いたいわけではありません。めざしたいのは洒脱な老人、おもしろい老人、生き方がうらやましいと思われる老人です。

常識老人をめざすよりも
高田純次キャラをめざせ

 いまから20年ほど前、歌舞伎俳優の坂田藤十郎さんが生前、50歳以上年下の舞妓と密会し、その際に着ていたバスローブをはだけて下半身を見せていたことまでが報じられ、騒動になったことがあります。

 それが彼の品格を下げたか否かについては両論あるでしょう。でも、妻の扇千景さんが意に介さない態度を示したからでもありますが、この騒動には当時、どこか笑ってすませられる部分があったと思います。

 そこで藤十郎さんが顔を真っ赤にして、「そんなことはしていない」と言っていたら、さぞかし格好悪かったと思います。記者会見で「お恥ずかしい。私が元気だということを証明してくださって」と、さらっと言えたところはさすがでした。

 若いうちは、世の中で生きていく以上、世俗の価値観や常識に縛られるのはしかたのないことです。でも、歳とともに自由になれる部分もあります。