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4月18日、米国のトランプ大統領がうつ病や依存症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する治療薬として「サイケデリックス」の超速優先審査を米食品医薬品局に命じた。
サイケデリックスは、セロトニン作動性幻覚薬、あるいは精神展開薬と呼ばれるカテゴリーの薬剤で、マジックマッシュルームに含まれるシロシビンやMDMA、LSDを指す。
1960年代に精神療法の補助薬としての研究が進められていたが、カウンターカルチャー・ムーブメントでの乱用が問題になり、70年代には米国をはじめ各国で規制が進んだ。
しかし2010年代に入ると、心理療法と少量のサイケデリックスとを組み合わせた臨床試験が行われるようになる。特に難治性のうつ病では、一度の投与で速効かつ長期的な寛解が得られるなど、ゲームチェンジャーとしての期待が高まっているのだ。
サイケデリックスの作用機序はまだ明確ではない。一つの仮説として脳のデフォルトモード・ネットワーク――ぼんやりと内省しているときに活発に働く脳神経系に働きかけることで、過剰なグルグル思考や予期不安、脳疲労を生み出していた強迫的なネットワークをリセットするほか、脳神経の成長と再生を促す因子を刺激し、柔軟性のある脳神経ネットワークを再編成すると考えられている。長期的な効果が期待できるのは、脳神経系の再構築が関わっているのだろう。
抗うつ剤としてのシロシビンの副作用は頭痛や吐き気、めまい、血圧上昇など身体症状のほか、当然だが「幻覚」が誘発される。一つの神秘体験として治療に必要だと主張する研究者もいるが、耐え難いバッドトリップやトラウマの再体験に見舞われることもある。このため、23年7月に世界に先駆けてシロシビンを承認したオーストラリアでは、服用は医療者の監督下でと縛りが付いた。また、長期的な安全性については未知数だ。
日本では大塚製薬がサイケデリックスによるPTSD治療薬を開発中の米トランセンド・セラピューティクスを買収し、30年ごろの米国承認を目指している。ただし、国内では慶應義塾大学との共同研究が始まったばかりで、承認までの道のりはまだ遠そうだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)







