まず手放すべき、たった一つの思い込み
まず、部下として最初に手放したいのは、「上司を変えれば関係が良くなる」という期待です。
なぜなら、部下が「上司の態度」を直接変えることは、ほとんどの場合、不可能だからです。そこにエネルギーを注ぐほど、自分のリソースは消耗し、自己効力感も低下していきます。
部下にできるのは、上司を変えることではなく、自分の心理的リソースを守ることです。自分の心理的リソースが枯渇してしまえば、相手の理不尽な行動に対して正しく対処することすらできなくなります。そうすると、「消耗する→成果が出ない→さらに消耗する」という負のループに入ってしまいます。
そして、自分を守るためには、第一に、「心理的リソース泥棒」の上司に対して最終的な選択肢として 「離れる」 という選択肢を持っておくことが大切です。
異動希望、配置転換、転職――いずれも「逃げ」ではなく、自分のリソースを守るために必要な「手段」です。「いざとなれば離れられる」という選択肢を自分の中に持っているだけで、日々の上司の言動からの消耗度が変わります。
でも、多かれ少なかれ、人間関係は消耗を生み出すものです。あまりにも簡単に「離れる」というカードを切ってしまうのは、その後の選択肢を狭めることにもなりかねません。
今日からできる、心理的リソースを守る小さなアクション
そこで、拙速に「離れる」という意思決定をして、あとから後悔しないためにも、まずは以下の3つの小さなアクションを意識してみましょう。
1)やり取りを「文字に残す」
上司自身が「自分が部下の心理的リソースを奪ってしまった」と自覚していることはほとんどありません。特に口頭で心理的リソースを奪われたときに、後から「上司の言動」を問題にしようとしても、「言った/言わない」という水掛論に陥りがちで、そのことでかえって心理的リソースを消耗する結果を招いてしまいます。
そこで、重要な依頼や合意は、必ずメール・チャットで一行残しておきましょう。これだけで、相手を疑ったり、自分を責めたりするループから抜けられます。
2)反応する前に、3秒挟む
上司から「不機嫌な言葉」を投げかけられたとき、カっとして反応的に振る舞うと、お互いに心理的リソースを奪いあうループに入ってしまいます。そこで、一呼吸置いて、心の中で「今、上司は機嫌が悪いんだな」「上司には違う景色が見えているのかもしれないな」と視点を変えるクセをつけるといいでしょう。それだけで、自分のネガティブな感情に巻き込まれずに、賢明な対処法を選べるようになります。
3)自分なりの「回復源」を持つ
上司とのかかわりで消耗したときに、自分の心理的リソースを満たしてくれる「回復源」を持っておきましょう。同僚とのおしゃべり、コーヒーブレイク、趣味、家族、社外コミュニティ、運動――何でもかまいません。自分の心理的リソースの消耗に気づき、自分でそれを満たすことができるという自己効力感が、心の安定をもたらしてくれます。
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上司が「心理的リソース泥棒」であることは、相手側の問題であって、あなたの問題ではありません。あなたは、あなたの心理的リソースを守ることだけを考えればいいのです。
むしろ、上司の「心ない言動」のせいで、あなたの心理的リソースが枯渇して、心の余裕を失ってしまえば、あなた自身が誰かの心理的リソースを奪う「泥棒」になってしまうかもしれません。それは、とても悲しいことです。
だから、「心理的リソース泥棒」である上司を変えようとするのではなく、自分を守る意識を強くもつようにしてください。あなたが、自分の心理的リソースを保ち続けていれば、気がつかないうちに上司との関係性にもよい影響を与えることが多いものなのです。
【出所】
*1 株式会社ビズヒッツ「嫌いな上司の特徴ランキング!男女500人アンケート調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000041309.html
*2 ジョブシーク「嫌いな上司ランキング」(280人調査)
https://jobseek.ne.jp/research-report/kiraina-jyoushi/
(心理的リソースについては、『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』で詳しく解説されています)
株式会社コーチェット 代表取締役
2005年に京都大学教育学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券(株式アナリスト)を経て、2014年にオンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotree、2020年にリーダー向けメンタルヘルスとチームマネジメント力トレーニングを提供する株式会社コーチェットを設立。2022年日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。経営する会社を通じて10万人以上にカウンセリング・コーチング・トレーニングを提供し、270社以上のチームづくりに携わってきた。エグゼクティブコーチ、システムコーチ(ORSCC)。自身の経営経験から生まれる視点と、カウンセリング/コーチング両面でのアプローチが強み。









