現代人が憧れる
「本音でぶつかる人間関係」
メインキャスト4人は、ミランダとアンディの他は、エミリー(エミリー・ブラント)と、ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)。これも前作と変わらない。
エミリーは前作でも続編でも、アンディのライバル的存在でありつつ、友情を結ぶ対象でもある。ナイジェルはアンディに似合う服を選んであげたり、大事な助言をしたりするメンター的存在だ。
ミランダを中心として、彼女たちは本音をぶつけ合い、シビアな物言いをする。相手を気遣った言い回しのほうが少ないように見える。皮肉たっぷりにものを言うし、それぞれが自分のキャリアに誇りと自信を持っていて譲らない。さらには自分のキャリアのために相手を蹴落とそうとすることも厭わない。特にミランダとアンディのやり取りはコント的でさえある。
しかし、それでは仲が悪く嫌いあっているのかといえば、そんなことはないのである。本心ではそれぞれに対するリスペクトがある。
現実社会ではその逆で、愚痴や悪口を封印してお追従で塗り固めるのが大人の社会であり、クッション言葉は社会人のマナーとされる。だからこそ、明け透けにものを言い合う彼女たちが眩しく見える。フィクションだからこそ楽しめる世界である。
前作でエミリーは炭水化物を抜くダイエットをして、アンディを「炭水化物を食べる人」扱いしていた。本作のラスト近くで、エミリーがポテトフライを頼むのを見てアンディが驚く場面がある。エミリーは言う。「2人で食べればカロリーはゼロ」と。
前作でもエミリーが炭水化物を食べるシーンはあったが、それは病院のベッドでのやけ食いだった。今回は2人で食べる。ときを経て人間関係が穏やかに変わっていくことを感じさせる名場面だった。
変わる時代に
失いたくないもの
『プラダを着た悪魔2』が成功した理由は、「懐かしいから」だけではない。
20年前の世界観をそのまま再現するのではなく、コンプラや多様性の価値観を取り込みながら「それでもなお、この業界は魅力的だ」と思わせるアップデートに成功しているからだ。
そして何より、本音をぶつけ合い、自分の仕事に誇りを持つミランダたちの姿は、建前や空気読みが重視される現代だからこそ、どこか眩しく映る。
仕事に全力で向き合う高揚感、時代に合わせて変わる職場のルール、それでも失われないプロ同士の緊張感――そのすべてを、大人がもう一度味わえる。
『プラダを着た悪魔2』は、「昔はよかった」と振り返る作品ではない。変化した時代の中で、それでも失いたくない価値観は何かを問いかける作品なのだろう。







