石井 人口が下がり始めた時に、僕らはそれまでの常識を変えないといけませんでした。同じく教育も、おそらくAIの登場によって分岐点を超えたと思うんです。

 これまでは仕事が忙しすぎて、社員も増えるし、教育も画一的にしなきゃいけなかった。だけど人も減ってきたし、AIによって個別最適を作ることがまったく苦じゃなくなってきた。

 それなら、一人一人のプロセスを聞いて、それに応じた異なるフィードバックを与える。上司がAIを使って、プロセスのおかしいところを抽出する。で、アドバイスもAIがある程度書く。最後に自分たちで直す。こうなるのが自然な流れだと思うんです。

これからの部下指導は「結果」より「プロセス」を見る時代へ

加藤 大学教育も過程に重心を置きつつあるとも聞いたことがあります。評価や指導の対象が結果ではなく「プロセス」になってきていると。

 その環境で学んだ人たちが、これから先、社会人になり、中堅になり、上司になった時に、部下指導の際にも同じようにするのは自然な流れ。結果もさることながら、「プロセスはどうだったの?」と。

 そのプロセス、プロンプトに対してAIが出してきたアウトプットに、人間が手を加えていく学びの構造。そういう学び方にみんなが変わろうとしているなら、そりゃ仕事だって同じになるはずですね。

石井 これまで、地図を見ながら「時刻通りにゴールまで辿り着けるように」と伴走していたのが、これからは「そこでその道を通ったのは失敗だったよ」「こっちの方が絶対早いから」みたいな感じで、地図全体を俯瞰して個別の指導をしてあげられる。それが、AIを使うことで可能になりました。

 ということで上司としては、結果はもちろん、過程も確認して評価しなくてはいけない。大変な時代だなあという感じですね。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』著者の石井力重さんと、監修者の加藤昌治さんによる対談をもとに作成したオリジナル記事です。

石井力重(いしい・りきえ)
アイデアプラント代表。早稲田大学 非常勤講師(デザイン論)。日本創造学会 元理事およびデジタル推進委員会 委員長。東北大学大学院修了後(理学修士)、ハイテク専門商社に5年勤務。同大2つの大学院(工学、経済学)博士後期課程にて創造工学を研究後に退学。新エネルギー・産業技術総合開発機構のNEDOフェローとして大学発ベンチャーに3年駐在。2009年にアイデアプラント設立。創造工学の研究、ブレインストーミング・ツールの開発、アイデアソンのデザインとファシリテーション、創造研修などをしている。研修を実施した企業、教育機関はこれまでに600以上で、のべ2万人以上が参加。実施企業は、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなど。
加藤昌治(かとう・まさはる)
1994年広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』『チームで考える「アイデア会議」 考具 応用編』『アイデアはどこからやってくるのか 考具 基礎編』(すべてCEメディアハウス)、『仕事人生あんちょこ辞典』(角田陽一郎氏との共著、KKベストセラーズ)など、ナビゲーターを務めた書籍に『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社)がある。