「それによると、カフェイン入りのコーヒーや紅茶の摂取量が多いほど、認知症発症のリスクや認知機能の低下が軽減することが報告されています」

「カフェインレスコーヒーの摂取では認知症発症リスクの低下や認知機能向上との関連が見られないようですから、紅茶のポリフェノール(抗酸化作用)に加えて、カフェインの抗炎症作用が重要なのでしょう。カフェインの神経保護作用によって、動脈硬化が予防されて加齢による認知機能低下を抑制するのだと考えます」

 JAMAの論文に挙げられているコーヒーも、紅茶と同様にカフェインを含み、クロロゲン酸(ポリフェノール)に抗酸化作用が、さらには血糖値上昇を抑制する働きもある。これが認知症リスクを下げる飲みものの三つめだ。

「コーヒー豆抽出物(特にクロロゲン酸類)が小腸で糖を分解する酵素の働きをブロックし、食後の血糖値上昇をゆるやかにすることが報告されています。つまりコーヒーにも抗糖化作用があるのです」(望月氏)

牛乳を「ほぼ毎日飲む」人たちの
認知機能低下の割合が少ない理由

 さて、ここまではカフェイン、抗酸化・抗糖化作用による認知症予防の効果であったが、四つ目は意外な飲みもの――「牛乳」である。

 福岡県久山町に住む認知症でない住民1081人(60歳以上)を対象に、1988年から17年間追跡した久山町研究では、1日に牛乳200ミリリットル程度を摂取する人は、摂取が少ない人に比べアルツハイマー型および血管性認知症の発症リスクが低かった(※3)。

 高齢者医療を中心とする浴風会病院でも2008~2011年に「認知症発症に関する食習慣」を調べている。牛乳を▽たまに飲む▽週1~5日飲む▽ほぼ毎日飲む―という3群に分けて4年間追跡した結果、「たまに飲む群」「週1~5日飲む群」と比べて、「ほぼ毎日飲む群」は認知機能が低下した割合が少なかったという。

 同研究に参加した精神科の須貝佑一医師(あしかりクリニック副院長)も、「ほぼ毎年同じような結果でした」と、認知症予防の効果を認める。

「ただし、病気と食生活の関係を調べるのは非常に難しい。人は調査対象の食品以外も取る必要があるため、長期的な研究結果をそのまま、ある単独の食品を摂取した結果だと判断することには無理があるのです。私は牛乳を飲む習慣がある人は、野菜や魚などを含めバランスよく摂取する傾向があるのではないかと考えています」

タンパク質の摂取が高いと
認知症発症リスクが低い

 望月氏は「牛乳に含まれるタンパク質と認知機能に関係があるのではないか」と推察し、こう説明する。

「日本の高齢者約700人を最長4年間追跡した研究では、血清アルブミン(タンパク質状態を示す指標)などが低い群は、高い群に比べて認知機能低下リスクが約2倍との報告があります(※4)。海外でも同様にタンパク質の摂取が高いと、認知機能の低下や認知症発症リスクが低いことが報告されています」

(※3)https://www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp/research/disease02.html
(※4)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24488214/