森七菜さん主演の映画『炎上』が、公開から連日満席で話題だ。歌舞伎町・トー横に集う若者を描いた本作で監督・脚本を務めるのは、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

予算と企画は表裏一体

 映画は0円では作れません。

 手伝ってくれた人、スタッフたちのために、お金を集めます。

 絶対に、ギャラを払いましょう。弁当を用意しましょう。睡眠時間を確保しましょう。

 それが主宰、スタッフを集めた人の最低限の務めです。

 そして当たり前ですが、10万円と1000万円でできることは大きく違います。

 基本的には、低予算なら撮影期間は短く、出演者やスタッフは少なくなります。

 つまり、予算と企画はいつだって表裏一体なのです。

お金で企画を決めるべきか?

 ここで、ある疑問が浮かぶ方がいるかもしれません。

 予算から逆算して、企画を考えるべきか?

 これは、難しい問題です。

「はい」とも言うべきだし、「断固、いいえ!」とも言いたい。

 それが回答かもしれません。

 予算を最優先に考えると、ワンシチュエーションで登場人物がなるべく少ない物語を書く。それも1日で撮影できそうなものを。という条件になっていくでしょう。

 たとえば、「友人が別荘を持っていて、そこで撮影できるらしい!」というパターン。

 そこで撮れそうな物語を書く。それもいいかもしれません。ロケ地費用が0円であることは予算的にかなり助けになるでしょう。

「それほど作りたくないもの」で消耗するな

 しかし、改めて大事なことを思い出してほしい。

「それは、あなたがどうしても描きたい物語なのか?」ということを。

 それが合致しているのなら、そんなに素晴らしいことはないです。

 しかし、そうではないとき、つまりあなたが取り掛かろうとしているものが、予算優先で作られた「本当はそれほど作りたいわけではない物語」ならば、簡単な話、別に作らなくていいのです。

 だって「本当はそれほど作りたいわけではない」のだから。

 つまり、いつだって脚本が先にあるべきなのです。使命感が先にあるべきなのです。

工夫は無限!

 では、作りたいものがあるとして、どうやって、それを実現させればいいのか。

 答えは2つ。

 1つ目は、もっと予算を集める!

 これは頑張ってとしか言えません。でも、そうするしかないのです。どんな手段を使っても構いません。頑張ってください。

 2つ目は、工夫する。

 工夫で、なんとかなる! これもまた同様に、どんな手段を使っても構いません。

 工夫は無限です。工夫工夫工夫工夫工夫! あきらめてはなりません。

 Aの手段がダメなら、Bの手段ならどうか? それがダメならCはどうか? それもダメならZならどうか?
 あなたの脚本が伝えたかったことが失われない範囲で、やれることを考えましょう。

 それには、「どんな手法でも構わない。実写でなくても構わない」ということをまずお伝えする必要があります。

 たとえば、あなたが壮大なファンタジーの脚本を書いたなら、AIで動画生成してつなげれば、撮影した場合の何千分の1の予算で作れるかもしれない。その動画にセリフをアフレコしてのせれば、映画になります。

 あなたの脚本で伝えたかったことが、AIの質感で失われるものでなければそれでいいのではないでしょうか。

 へたでもいい。それはきっと「本当はそれほど作りたいわけではない物語」なんかより、千倍素晴らしいものになるはずだから。