テールリスクの「中国の台湾侵攻」が突き付ける、TSMC抜きでは成り立たない世界のAI半導体事業の現実Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

台湾における一国二制度

 ロシアのウクライナ侵攻や米国とイスラエルによるイラン攻撃が、これほど長期化、大規模化するとは予測できなかった。中国による台湾への軍事侵攻の可能性は、現時点で著しく低いと考えられる。しかし万が一、台湾への侵攻が発生した場合、AI(人工知能)関連企業を中心に、世界の株式市場を大きく揺るがす事態に至る可能性が高い。

 習近平は2013年に中国の国家主席に就任した。主席の任期は5年間で、何度でも再任可能である。このため、習の健康状態が許せば国家主席であり続ける可能性がある。現在、習は72歳だが、38年に84歳になる。ただし、これは中国の歴史では特に高齢ではない。毛沢東は82歳(死去)、鄧小平は85歳(92歳で死去)まで、最高権力者の地位にあった。

 鄧小平は1982年に「一国二制度」によって、香港と台湾の中国との統一を提案した。鄧は「武力で奪われた香港を武力で取り戻す用意がある」と述べ、英国サッチャー首相と香港返還交渉を行った。香港返還は97年に平和裏に実現し、中国は2020年、香港国家治安維持法制定によって実質支配を取り戻した。

 一方、香港と異なり、台湾は中国固有の領土ではない。中国による台湾支配の歴史は意外に短い。台湾の原住民はポリネシア系であり、最初に統治したのは17世紀初頭のオランダだった。オランダ東インド会社が1624~61年に台湾を支配し、その後、長崎平戸出身の鄭成功が台湾を支配した。83年に清の支配下となり、福建省台湾府(その後、台湾省)となった。

 日清戦争(1894~95年)後、95年の下関条約により、清は日本に台湾を割譲した。第2次世界大戦後、日本の統治が終了し、蒋介石率いる国民党が1949年に台北に遷都した。このように、中国本土の漢民族が台湾を支配したことは歴史的にない。