世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

【自治体格差】「うちの魚は新鮮です」だけじゃダメ。客を呼べる地方と埋もれる地方の決定的な違いは?Photo: Adobe Stock

「米がうまい」「魚が新鮮」な地域は日本にいくらでもある

 本書でも繰り返しお話している通り、地方の食は面白いし、わざわざ行く価値があります。しかし、それがありふれたものでは誰も見向きもしません。
 私は、2023年にガストロノミーツーリズムで地方創生しようという内容の『ニッポン美食立国論』を出版したことで、数多くの地方自治体の活性化に携わってきました。

「この地方で客を呼べる食文化はありますか?」とお聞きすると、ほとんどの方がこう答えます。
「うちの米はうまいです」「魚が新鮮です」。

 それは間違いではないでしょう。でも、それだけではだめなのです。
 米や魚が美味しい地域は、日本中にいくらでもあるからです。唯一無二の価値がなければ、人はわざわざお金と時間を使ってその地方まで足を運びません。

 逆に来ていただけたらしめたものです。他にもたくさんある豊かな食を体験し、もっと好きになってもらえるかもしれないからです。

 そこで大切になってくるのが、「ヘンタイ」の存在です。ヘンタイが一人でもいれば、その人を起点に人が集まり、輪が広がって、旋風を巻き起こすことができます。私の役目は、ヘンタイをいち早く発見する、あるいは芽がある人を育てる。そして、旋風を巻き起こすサポートをすることだと考えています。情報を発信したり、自治体と協力して二次交通や宿を整備したりするお手伝いです。

 本書で、私はヘンタイというのは「周囲の評価を気にせず、自分が本当にやりたいことに突き進む人」だとお伝えしました。しかし、その特性をもう一段階深掘りすると、「自分を上手に俯瞰できる人」ともいえるのではないかと思います。

 人の目を気にしていないのに、自分を俯瞰できるとは、一見矛盾しているように感じるかもしれません。けれども、彼らヘンタイは、決して傍若無人ではありません。自分の信念は優先するけれども、お客様のメリットになる体験を提供しないと店を継続することはできません。自分の譲れない部分と、お客さんが求めていること。そのバランスをうまく見極める力に長けているのだと思います。彼らは、自分の個性を認識し、その活かし方を知っているからこそ、注目されるのでしょう。

 これからの時代を切り拓いていくのは、「ヘンタイ」です。可能性を持つ地方をどの程度発展させられるかは、行政や私のような人間がヘンタイを活かせるかどうかにかかっているのです。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。この記事の情報は、本書の発売時のものになります。