農協の大悪党#7

中川泰宏に26年以上にわたって牛耳られてきたJAグループ京都では、選挙で中川に貢献した職員が登用される異常な人事が行われてきた。農協幹部が代表などを兼ねる政治団体は、公職選挙法に抵触する疑いのある活動を行っているなど問題が多い。2021年に70歳になった中川は、自らの後任に忠臣を据えて院政を敷き、世襲を画策しているとみられる。連載『農協の大悪党 野中広務を倒した男』の#7では、本来、農家によって民主的に運営されるべき農協が、中川個人によって支配されている実態を暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

今夏の中川の誕生日・花火大会で
公職選挙法違反の疑いも!

 下の写真はJAグループ京都の実態をよく表している。写真に写っているのは、中川泰宏が会長を務めるJA京都の八木支店の建物だ。驚くべきことに、掲示板だけではなく1~2階に見える全てのガラス窓に、政治活動用のポスターがべたべたと張られている。

中川泰宏が会長を務めるJA京都の八木支店。ガラス窓には、同支店がある南丹市の市長選挙に向けて現職の西村良平市長の知名度を上げることが目的とみられるポスターがべたべたと張られている中川泰宏が会長を務めるJA京都の八木支店。ガラス窓には、同支店がある南丹市の市長選挙に向けて現職の西村良平市長の知名度を上げることが目的とみられるポスターがべたべたと張られている Photo by Hirobumi Senbongi

 ポスターには、京都府知事の西脇隆俊と南丹市長の西村良平が引き締まった表情で登場し、新型コロナウイルス感染防止策の徹底を呼び掛けている。西脇は自民党や立憲民主党など共産党を除く主要政党の推薦を受けて2018年の知事選で勝利。固い支持基盤を持つ知事だ。

 その知事が一自治体の首長にすぎない西村と写真に収まるのは異例のことなのだが、要するにこのポスターは、22年4月に予定される南丹市長選に向けて現職の西村の顔を売っておくためのものとみられる。西村のイメージアップに、人気者の府知事が一役買っているわけだ。

 農協の政治運動としては、全国の560の農協を束ねるJA全中(全国農業協同組合中央会)の集票組織である全国農政連(全国農業者農政運動組織連盟)による活動が一般的だ。全国農政連は、農協や農業に有利な国レベルの政策を実現するために国政選挙で農林族議員を応援する。全国農政連の要請の内容の是非はともかく、その政治活動自体は、圧力団体として当然の行動といえる。

 一方で、JA京都ならびに、上部団体のJA京都中央会による地方政治における選挙運動の目的は何なのか。農協や、その組合員である農家のためになっているのか――。それを取材すると、極めて異常な実態が明らかになった。

 その実態とは、農協職員がプライベートの時間を犠牲にして選挙を手伝っていたり、中川の政治的な影響力拡大への貢献が認められた人物のみが出世したりというものだ。農協“私物化”以外のなにものでもない。