手足をバタつかせて必死で抵抗したり、「放して、放して」と泣き叫んだりする子どもたちの姿が映し出されており、「クローズアップ現代」でも番組冒頭のカットに使用した。「私たちには暗然たる未来が待っているだろう」という重々しいナレーションで締めくくられて、一時保護の不当性・違法性をことさらに強調したオウム側のプロパガンダの一種だ。
現場にいた大人の信者たちは「近くにお母さんがいますから」「なんで連れて行くんですか」と警察官に抗議していた。ある信者の女性はビデオ内で教団側のインタビューに対し、「近くに親がいると訴えても連れて行かれた。母親が抱いている子どもすら大きな機動隊員に連れ去られた」と証言しており、一時保護の不当性を訴えていた。
確かにこの映像を見る限りでは、嫌がる子どもたちを無理やり連れ出したと見えなくもない。ただ、サティアン内部での粗末な食事や、劣悪な生活環境については一切触れられておらず、オウム側の一方的な言い分だということに注意が必要だ。
現場に入った石和警察署の元警部補、花形友夫さんは「床に残飯は落ちているし、着ているものは汚い。近くに保護者もいないし、子どもを養育する環境としては不適切だったことは間違いない」と証言している。
白いヘッドギアをつけた
顔面蒼白の子どもたち
11時56分、一時保護は終わった。1人目の保護から約1時間がたっていた。最終的に保護した人数は53人と確定し、大型バス1台、マイクロバス1台の計2台で、甲府市の児童相談所に向けて出発した。
子どもたちの保護は、昼のトップニュースになった。テレビを観ていた児相職員の間に緊張が走った。判定課長だった保坂三雄さんは「いよいよこの子どもたちがここにやってくる」と、身震いしたことを覚えている。
記録によると、児相は午後2時30分、所内会議を開き、子どもたちの受け入れ手順を確認している。子どもが到着次第すぐに健康診断を行うこと、一時保護所だけではなく、隣接する婦人保護相談所(現・女性相談支援センター)の施設でも子どもを預かってもらうことなどを改めて申し合わせた。
『オウム真理教の子どもたち』(NHK「クローズアップ現代」取材班、集英社インターナショナル)
2時55分、子どもたちを乗せたバスが、児童相談所に到着した。それまでに児相の玄関前には、新聞社やテレビ局の記者、カメラマンが集まっていた。NHKのカメラが、児相に子どもたちが運び込まれる瞬間をとらえている。
警察官によって次々に建物に運び込まれる子どもたちの頭にはヘッドギア。服は薄汚れ、外の光を浴びていないためか、肌は透き通るほど白い。
初めて対面した子どもたちに、保坂さんたち児相職員は健康状態を心配するとともに、異様な雰囲気を感じ取った。
「全員が、顔色が真っ白というか、真っ青の子どももいました。頭には白いヘッドギアをつけた得体の知れない集団。あまり言葉は発しない。要するに、我々は警察と同じ敵だと思われていましたからね。本当にどこか違う世界から来た子どもたち――そういう印象を持ちました」







