写真はイメージです Photo:PIXTA
浜辺美波と目黒蓮のダブル主演映画『ほどなく、お別れです』がヒットするなか、現実の納棺の現場ではどのような“別れ”が積み重ねられているのか。納棺の場では、分け目や前髪、ウィッグなど髪型の細部まで遺族に確認することがある。そこには、その人が生きてきた時間と、家族が見てきた姿が刻まれている。納棺師として数多くの現場に立ってきた著者は、“いつもの姿”に近づけようとする遺族の思いに向き合ってきた。髪に込められた記憶と、別れの場に宿る願いとは。※本稿は、納棺師の大森あきこ『いつもの場所に今もあなたがいるようで』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
故人のこだわりを尊重した
難しすぎるオーダー
「故人がいつも付けていたものだから、よろしくお願いね」
葬儀会社の方からポンと手渡された毛玉。
これなんですか?と聞くと、
「え?髪の毛だよ」
と当たり前のように答える。少々髪の薄い男性の故人と、そんな心配はなさそうな担当者さんを交互に見返します。この毛をどんな風に付けていたのかいろいろ考え、広げてみたり縮めてみたり格闘しながら、どうにか今ある毛となじませて遺影の写真に近づけました。遺族には会えませんでしたが、喜んでくれるのを祈るばかりです。少なくとも写真の髪型に近づいたことを、故人だけはちゃんと喜んでくれているのではないかと思っています。
納棺式では髪を整えるシーンがあります。特に問題がなければドライシャンプーという洗い流さないシャンプーで少しさっぱりしていただきます。その後は乾かしながら生前のこだわりを遺族に聞いていきます。
分け目はどっちから?前髪はおろしていたのか?長髪なら結んでいたのか?耳にかけていたのか?と正解を探していきます。
どうしても、介護や闘病期間が長いと、お元気だった頃の髪型ではなくなってしまうこともあります。お世話しやすいようにとはいえ、「何もこんなに短くしなくても……」と思うほど短くなっている人もいれば、伸びてしまったことを気にしている遺族もいます。







