【視点1】
生態系の視点

 最初の視点として株価があがっている企業に目を向けてみます。

 日本企業で給与が高いというと真っ先に銀行が思い浮かぶと思います。そのメガバンクは過去40年間、日本企業の時価総額ランキングでつねに上位に来る優良企業でもあります。

 三菱UFJフィナンシャルグループの開示資料をもとに、銀行のビジネスモデルの構造を解明してみましょう。従業員数は連結で約15万6000人。2025年の開示資料によればひとりあたりの年収は1050万円、中核子会社である三菱UFJ銀行単体の平均年収は856万円、一般の企業よりも高給ですね。

 銀行はシンプルにとらえると預金を集めて企業に貸し出して儲ける会社です。従業員ひとりあたりの預金額を計算すると約15億円になります。

 その際にどれだけ預金金利を払っているかを計算しましょう。30代の平均預金額は約600万円です。金利0.1%なら6000円。このように預金者からとても低コストでお金を集めるのが銀行経営のコツのようです。

 では企業としての銀行はどれくらい稼いでいるのでしょうか?純利益が2兆4200億円ですから、従業員ひとりが稼ぐ利益は単純計算で約1550万円です。この純利益は株主の利益になります。

 シンプルなビジネスモデルとして考えると、預金者から低コストで預金を集め、従業員としては1050万円とか856万円といった給料をもらって、株主に1550万円を上納する。これが企業としてみた場合の銀行の収益構造です。

 ここからふたつの不都合な事実が読み取れます。

 ひとつは高給取りで知られる銀行ですら、労働者よりも株主のほうが生態系の食物連鎖の上位に来るということ。もうひとつは、その利益は日本人の大半が低金利ないしはゼロ金利にもかかわらず、あいかわらず銀行に預金をしていることで成立しているということです。

 これをひとことでまとめると「大半の日本人は銀行の株主に搾取されている」わけです。

 銀行に限らず日経平均の上昇はすべて株主の利益です。そして株価が上昇している企業では、ほぼほぼ共通して従業員の人件費よりも株主の利益のほうが多いのが構造です。そして外国人株主が増加している現在、まるっと言ってしまえば日本人が外国人に搾取される構造にもなっている。これが日経平均が上昇しても大半の日本人が豊かになっていないひとつめの構造です。