ハリウッドの看板Photo:PIXTA

1989年、ソニーは約6700億円を投じて米映画会社コロンビア・ピクチャーズを買収した。製造業からエンターテインメント企業への変革を目指した壮大な挑戦だったが、待っていたのはハリウッドからの冷笑と巨額損失だった。なぜ世界企業ソニーは映画ビジネスでつまずいたのか。その失敗の内幕を追う。※本稿は、ノンフィクション作家の児玉 博『ソニー神話を壊した男 出井伸之が創った未来』(小学館)の一部を抜粋・編集したものです。

ハリウッドはあまりに異界すぎた
経営丸投げがソニーに悪夢を招く

 製造業一辺倒だったソニーをデジタル、ネットワークのソニーへと舵を切り、エンターテインメントを創造する会社へと生まれ変わらせる端緒を開いた出井伸之だが、“カリスマ創業者”らが経営の一線から退いた後、ソニー初のサラリーマン出身の社長としてトップに立った出井にのしかかった課題、負債は余りに大きかった。

 コロンビア・ピクチャーズ……。

 1989年に、この会社をおよそ48億ドル(当時のレートで約6700億円)で買収した時からソニーの悪夢は始まった。

 当時、製造業の会社だったソニーにとって、映画、ことにハリウッドの世界は余りに“異界”に過ぎた。買収を完了した後、社名は「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント」へと変わったが、逆に東京のソニー本社からは制御不能の状態に陥った。

 ソニー側が“ハリウッドのすべてを知り尽くしている”と判断して雇った外国人に、経営を丸投げしていたことに根本的な失敗の原因はある。だが、それにしても、ソニー・ピクチャーズの惨状は目を覆うばかりだった。

 ソニー・ピクチャーズが経営陣として雇った米国人たちに食い物にされるという、その恥ずかしい様は、後に米国人ジャーナリストの手によって『ヒット&ラン』(キネマ旬報社。1996年)という本にまとめられる。