ソニーPhoto:123RF

ソニーグループは9月29日、金融子会社を東証プライム市場に再び上場した。新しいグループの再編を進める中、エンターテインメント事業を半導体事業と並ぶ収益源に育て、この分野で世界トップになることを目指している。ソニーが、世界的な総合エンターテインメント企業である米ウォルト・ディズニー社を超えるための課題は何か。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

『鬼滅の刃』大ヒットでソニー“最強伝説”復活か

 9月12日、ソニーが北米で公開したアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、14日までの推定興行収入が7000万ドル(1ドル=147円で約103億円)と大ヒットとなった。米国で公開されたアニメ映画の第1週の興行額で過去最高を更新した。

 ソニーが狙うのは、コンテンツビジネスで米ウォルト・ディズニー社を超えることだろう。同社は急速に映画・ゲーム・音楽事業などのコンテンツ部門を強化し、着実に成果を上げている。

 1990年代以降、ディズニーは『トイ・ストーリー』などを持つピクサーをはじめ、数多くの買収を行い、コンテンツ・ポートフォリオを拡充した。そうした戦略が次第に実を結び、ディズニーはコンテンツで稼げる企業へと成長していった。

 ディズニーの買収戦略とは異なり、ソニーは自社コンテンツの創出力に磨きをかけてきた。それを可能にしたのは、日本のコンテンツ産業に相応の競争力があったからに他ならない。日本の強みを知るソニーは、それを一段と高め『鬼滅の刃』のヒットにつなげたのだ。

 ソニーは、エンターテインメントを画像処理半導体と並ぶ収益源に育て、この分野で世界トップになることを目指しているはずだ。ただ、ソニーがディズニーを超えるためには、まだクリアしなければならない課題もある。

 その一つが、クリエーターとの関係の強化だろう。わが国のアニメ産業の収益性は必ずしも高くはない。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』など数々のヒットで知られるスタジオジブリは、2023年に日本テレビグループの傘下に入った。ヒト・モノ・カネのリソースを安定させるのが狙いにある。今後、ソニーはどのようにコンテンツの創出能力を高めるのか。国内の映画やアニメ産業を巻き込むことができるのだろうか。