ホルムズ海峡封鎖“長期化”の新たな懸念、世界的な「肥料不足」で食品インフレ深刻化イラン情勢の緊迫化とホルムズ海峡の封鎖により、肥料価格や農業機械用のディーゼル燃料のコストが急騰している(ミシガン州グラスレイクで) Photo:UCG/gettyimages

世界の海上肥料貿易の3分の1占める要衝
尿素の市況は2月から約5割上昇

 米国・イスラエルによるイラン攻撃開始から2カ月半が経過したが、米国とイランの和平交渉はイランのウラン濃縮や核開発問題などで壁にぶつかり、ホルムズ海峡の封鎖も長期化する可能性が高まっている。

 5月14、15日に行われた米中首脳会談でも、ホルムズ海峡の自由航行回復の重要性では合意したものの、具体的な行動や対応策は示されないままだった。

 ホルムズ海峡は、世界の原油・石油製品の約25%、天然ガスの約20%が通過する世界のチョークポイントだが、エネルギー不足の問題に加えて海峡封鎖の長期化で新たに注目されるのが、世界的な肥料不足懸念だ。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、ホルムズ海峡は世界の海上肥料貿易のおよそ3分の1を占める要衝であり、その封鎖が肥料市況に与える影響は大きい。

 中東諸国は、尿素やアンモニアなどの主要輸出国であり、尿素の市況は2月から3月にかけて約5割上昇した。

 こうした肥料価格の高騰や不足が本格化すれば、肥料を大量に使用するトウモロコシなどの穀物価格の高騰につながり、さらには食品インフレへとつながっていく。

 実際、2022~23年には、ロシアによるウクライナ侵攻を機にこうした「連鎖」が起きインフレが長期化した。

 現状では、肥料、穀物価格などの上昇幅は当時ほどには大きくない。だがホルムズ海峡の封鎖が長引けば、農業生産資材の高騰も相まってリスクは高まる。

 日本にとっても、中東からの輸入こそ少ないものの、主要な輸入国である中国との関係悪化が続いていることなどから、農作物価格への影響は避けられない。食品価格の動向はインフレと景気の両面にわたって長期に影響を及ぼす懸念があり、注意が必要だ。