米・イラン和平協議に揺れる原油相場、停戦合意“成立”でも消えぬ供給不安と「原油高リスク」Photo:JIJI

米国とイランの停戦・和平協議を巡る思惑に、原油相場が大きく振れている。ホルムズ海峡の再開期待が高まればWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は急落する一方、交渉難航や海上封鎖の長期化懸念が強まれば急騰する展開だ。仮に覚書で合意しても、供給回復には時間を要し、需給の逼迫(ひっぱく)感は当面残りそうだ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

和平期待で急落、交渉難航で
急騰する原油相場

 イラン情勢は予断を許さない状況が続き、米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は不安定な推移が続いている。

 米国とイランとの和平協議を巡る思惑で不安定な推移となっていた4月上旬ごろからの原油相場の動向を振り返る。4月8日は、前日にトランプ米大統領が、米国とイランが2週間の停戦で合意したと表明したことを受けて、WTIは16.4%安と急落した。両国は、詳細を詰めるための交渉を仲介国パキスタンの首都イスラマバードで10日にも開始する見通しとされた。

 9日は、WTIが3.7%高と反発した。8日の米・イランの停戦合意後もイスラエルは停戦の対象外としてレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを攻撃し、イラン側は合意違反として対米交渉に出席しない可能性を示唆した。この日、イスラエルのネタニヤフ首相はレバノンとの和平交渉を開始するよう指示した。

 14日は、12日に物別れに終わった米・イランの和平協議が再開されるとの期待が高まり、WTIは7.9%安と下落幅が大きくなった。両国の交渉チームが週内に再びパキスタンを訪れ、協議を行う可能性があると報道された。

 16日は、前日に米・イランの戦闘終結に向けた2回目の協議が開催される見通しと発表されたことや、イスラエルとレバノンが首脳会談で「10日間の停戦で合意した」とトランプ大統領がSNSに投稿して相場の押し下げ材料になった。もっとも、それらの実効性について懐疑的な見方が浮上して、結果としてWTIは3.7%高と買い戻された。

 17日のWTIは11.4%安となった。イランのアラグチ外相が、米国との残りの停戦期間中は全ての商船に対し、ホルムズ海峡を「全面的に開放する」と表明し、トランプ大統領が「イランは同海峡を二度と封鎖しないことで合意した」とSNSに投稿すると、WTIは80.56ドルまで下落する場面があった。

 しかし、その後、同大統領は「取引が100%完了するまで、米海軍が対イラン海上封鎖を継続する」とし、イラン側は海上封鎖が続けば停戦協定違反と見なして同海峡を封鎖するとした。

 20日は、米・イランの2週間の停戦期限切れが22日に迫る中、WTIは6.9%高となった。米軍は前日に海上封鎖を突破しようとしたイランの貨物船を拿捕(だほ)し、イランは報復を表明した。

 22日は、前日にトランプ大統領が協議終了までイランとの停戦の延長を表明したものの、この日、イラン革命防衛隊がイスラエル関連の船舶を含めた計2隻を拿捕したことやコンテナ船を攻撃したことを受けて、WTIは3.7%高となった。

 週明けの28日は、前日にイランが示した新提案に関し、米政権が懐疑的な見方を示していると報じられ、ホルムズ海峡の封鎖が長引くとの見方が強まり、WTIは3.7%上昇した。

 29日は、トランプ大統領が側近に対し、イラン港湾の長期封鎖を見込んだ準備を指示して石油供給の混乱長期化懸念が強まり、WTIは6.1%高と大幅に続伸した。

 30日は、イランが示した新提案をトランプ大統領が拒否する意向とされ、米中央軍のクーパー司令官がこの日、同大統領に新たな軍事行動の計画を説明すると報じられ、一時、WTIは110ドル超と4月7日以来、欧州北海産のブレントは126ドル超と2022年3月以来の高値に上昇する場面があったが、その後、利益確定売りに押された。

 次ページでは、5月に入ってからの相場を検証するとともに、先行きを予測する。