「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「説明」がうまい人がいつも頭においていること・ベスト1

「説明」がうまい人

「説明がうまい人」と聞くと、語彙力が豊富な人を想像するかもしれません。
 難しい言葉を自在に操り、論理的に話せる人。

 たしかにそれも一つの能力です。
 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、説明上手な人にはもっと本質的な特徴があると語られています。

 それは、「分けて考えること」です
 実は、説明が下手な人ほど大きな言葉をそのまま使い、説明が上手な人ほど、その言葉を細かく分解して考えているのです。

人は「分ける」ことで理解してきた

 本書では、まずこんな話が紹介されています。

パッとイメージができない言葉も、見えるレベルにまで分ければイメージが掴めます。
いまの日本では「批判」というと、「非難」とほとんど同じ意味で使われています。
でも、この言葉は哲学の文脈では「よく吟味する」という使われ方をします。
フランス語やドイツ語の」クリティーク」が「批判」の訳語ですが、もともとはギリシャ語の「クリノー(分ける)」という言葉に由来するそうです。
日本語の「わかる」という言葉も、「分ける」が語源だと言われています。
言葉の語源から推測すると、私たちは何かを理解するために、ものごとを分けることをやってきたということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは非常に興味深い指摘です。
 私たちは何かを理解するとき、「まとめる」のではなく、「分ける」ことをしています。
 漠然としたものを細かく切り分ける。

 そうすると、それまで見えていなかったものが見えてくるのです。

説明が上手な人は、大きな言葉を使わない

 本書では、「経済」という言葉を例に挙げています。

「経済」という言葉も「ミクロ」と「マクロ」に分ける。
ミクロなら、消費、生産、流通で分ける。
そうすれば、消費、生産、流通の、現実の姿が目に見えてきます。
マクロなら、どの数字が問題にされているか見てみる。
消費者物価指数なら、なんの価格をもとに算出されているのか調べてみるのです。
すると、グミは関係があるけど、ネクタイや煮干しは関係なくなった、とわかります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 説明が苦手な人は、「経済が大事です」と言います。
 しかし、それだけでは何も伝わりません。

 説明が上手な人は、「経済」という大きな言葉をそのまま使わない
 消費なのか、生産なのか、流通なのか。どの話をしているのかを細かく分けていく

 だから具体的になる。だから伝わるのです。

「解像度を上げる」とは、分けること

 本書では、ビジネスでよく使われる「顧客理解」についても触れています。

たとえば、「顧客」の解像度を上げるという場合も、まず2つに分ける。
「商品を買ってくれる客、買ってくれない客」
それをまた、「リピートしてくれる客、してくれない客」と「認知してくれている客、認知してくれていない客」に分けていく。
こうやって「顧客」を細かく分けていくと、自然と「解像度が上がった」のと同じ状態になっているはずです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

「顧客を理解しよう」

 この言葉だけでは抽象的すぎます。
 顧客とは誰なのか。既存顧客なのか。新規顧客なのか。購入者なのか。検討者なのか。
 そうやって分けていくことで、初めて現実が見えてきます

 つまり、「解像度を上げる」とは、難しいことではありません。
 大きな言葉を細かく切り分けることなのです。

説明上手な人は、抽象語を現実に戻す

 本書では最後にこう語られています。

この切り口に正解はありません。
地域や年齢で切ったほうがいいというケースもあるはずです。
「リスク」や「付加価値」など、ビジネスの現場で使われている言葉は、パッとイメージができない言葉が多くあります。
その場合は、現実の姿を見ていきましょう。
「リスク」なら、あれもリスク、これもリスク、と、現実にリスクだと思うものを指さしていくのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここに説明の本質があります。
 説明が下手な人は、抽象語を抽象語のまま使います

「リスクです」「価値があります」「課題があります」で終わってしまう。

 一方、説明が上手な人は違います。

「そのリスクって何?」
「具体的に何が起きるの?」
「誰が困るの?」

 と考えながら、言葉を現実に戻していく。
 だから相手の頭の中にも同じイメージが生まれるのです。

説明の上手さは「分解力」で決まる

言語化だけじゃ伝わんない』は、説明の本質を教えてくれます。

 説明がうまい人は、難しい言葉をたくさん知っている人ではありません。
 大きな言葉を細かく分けられる人です

「経済」を分ける。「顧客」を分ける。「リスク」を分ける。
 そうやって抽象的な言葉を現実に近づけていく。

 説明がうまい人がいつも頭においていること。
 それは、「この言葉は、もっと分けられないだろうか?」という視点なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。