彼らは、デジタルを「生活の質を高めるためのツール」として捉え、積極的に活用する生活者へと変貌を遂げているのです。このような情報への高い審美眼と能動的な探求心が養われた結果、令和シニアは単なる価格や規模ではなく、自らの価値観に合致するかどうかを重視した、成熟した「選択的消費」を行うようになりました。

 具体的には、「値段が高くても気に入れば買う」という意識が令和シニア層で伸長しており、これは、単なる「安さ」ではなく、自分にとって本当に満足できる価値や品質に投資を惜しまないというこだわり消費の傾向を示しています。

『THE FRONTLINE GENERATION令和シニア なぜいまZ世代マーケターは60代に「未来」を見るのか?』書影『THE FRONTLINE GENERATION令和シニア なぜいまZ世代マーケターは60代に「未来」を見るのか?』(株式会社博報堂ストラテジックプラニング局、株式会社Hakuhodo DY ONE、宣伝会議)

 この「自分基準」で選び抜く消費スタイルは、企業やブランドに対する信頼の尺度にも明確な変化をもたらしています。かつては社会的信用を測る指標であった「良い企業の判断基準は名前をよく見聞きすること」や「良い企業の判断基準は売上高が大きいこと」といった項目が、令和シニア層では減少傾向にあります。

 逆に、企業に対する判断基準の軸足は、より本質的な「信頼性」と「透明性」へと移っています。例えば、「法律に違反した行為をしない」「都合の悪い事も隠さず公開する」といった、企業倫理や誠実さに関する項目が上昇傾向にあります。

 この事実は、彼らがマスメディアや企業の表層的なイメージに安易に依存しないことを意味しています。むしろ、デジタルを含めたさまざまな媒体を駆使して情報を深く探索し、自分自身の尺度でその企業や商品の持つストーリー、品質、信頼性を冷静に見極め、自らが納得できる企業の商品にのみ消費を集中させるという、極めて主体的かつ高度な消費行動を実践している世代なのです。