Photo by Yuji Nomura
SNSの普及とAIの台頭により、旧来の広告モデルが限界を迎えている。そうした中、広報業務を手掛けるEnjinが月5万円でクライアントのPRを代行するサービスを1月に開始した。価格破壊とも捉えられかねない策を打ち出した狙いとは何か。連載『メディア興亡』の本稿では、インターネット動画サービス「ニコニコ動画」運営会社の元社長で、EnjinメディアプラットフォームカンパニーCEO(最高経営責任者)の杉本誠司氏と、CMO(最高マーケティング責任者)の五十嵐貴行氏を直撃。PR業界にまん延する「数値至上主義」への警鐘と、プラットフォームにのみ込まれゆくメディアが生き残るための「絶対条件」を浮き彫りにする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 猪股修平)
PR業界をむしばむ数値至上主義のわな
「やったつもり」が招く思考停止
――PR市場における課題や、それを踏まえた今後の展望をどう見ていますか。
五十嵐貴行CMO PR業界全体の課題は、一口に言えば目的を見失っていることです。テクノロジーが進む中で、PRを打つことが「かけた投資に対してどれだけ回収するか」というマーケティング的な数値ばかりを追い掛け、あまりにデータに寄り過ぎています。
本来、情報発信は消費者やユーザーに対して行われるべきですが、それがいつの間にか自社視点のビジネス的な販促として捉えられ、実数値ばかりを追い掛けてしまう。直接的なコンバージョン(成約)だけを追い求めるあまり、本来のPRが持つ社会との合意形成という役割がおろそかになっている点には、強い危機感を感じています。
杉本誠司CEO 私も同感です。今、PRと販促、あるいは宣伝がニアリーイコールになってしまっています。その境界線は曖昧ですが、販促に寄り過ぎると、直接的な販売に直結しにくい本来のPRがないがしろにされます。
また、SNSの普及で誰でも広報できるようになりましたが、実は情報は以前よりもはるかに届きにくくなっている。メディアやユーザーの嗜好が細分化される中で、形だけのYouTubeチャンネル開設といった「やっている感」だけの施策が跋扈し、結果として成果につながらない負けパターンに陥っています。
結局、同様のチャンネルが乱立されてほとんど見られていないのが現実です。担当者としては仕事をしたつもりになれますが、メディアを使わなくてもいいという風潮は、結果として業界全体の思考停止を招いている気がしています。
――貴社は月5万円でPR業務を代行するサービスを展開しています。企業が外部の力を借りて広報する意義とは何でしょうか。
PRの本質が「販促」へとすり替わり、形だけの施策があふれ返る現状を両氏は厳しく指弾する。しかし、情報の海に埋没するのはメディア環境のせいだけではない。発信者側が陥る「エゴ」と、プロフェッショナルが介在する真の意義とは何か。次ページでは、中小企業が抱える広報の「壁」の正体と、大手広告代理店との意外な関係、そして「水」を例えとしたPRの神髄を明らかにする。







