組織で共有すべきなのは
「誰が何を知っているか」

 メンバーが、解決できない問題で悩んでいるとき、どうやって解決しますか?

 上司に相談し、上司が適切なアドバイスをして解決する。それも大事ですが、メンバー同士で知恵を借りられる仕組みがあると、1人で悩まなくていいことも多くあります。

「トランザクティブ・メモリー」という言葉をご存じでしょうか。これは、社会心理学者のダニエル・ウェグナーが唱えた組織学習に関する概念です。

 組織の記憶力(経験によって学習した情報の蓄積)において重要なのは、組織全体が同じ知識を記憶することではなく、「組織内で『誰が何を知っているか』を把握すること」である、という考え方です。

 わかりやすく言うと、「誰がどのような情報に詳しいか、どのような知恵や知識、スキルを持っているか」を共有できていると、誰かがわからない問題に直面しても、誰に聞けばいいかがわかっているので、その人にすぐに連絡をとり、教えてもらうことができるのです。

 社内に、多くの専門知識や知恵、経験を持っている人がいるとわかっていれば、経験の浅いメンバーにとって大きな安心材料になります。困ったときに相談できる相手がいることは、仕事への自信にもつながります。

社員同士の勉強会が
風通しのよい社風を育む

 いくら相談していいと言っても、なかなか聞きにくいものです。気軽に相談できるようになるためには、人的ネットワークが築かれていることが必要です。そのネットワークが生まれるための仕組みを、組織的に提供します。

 たとえば、「データを活用した企画書を作成するのが得意な人」のように、何かが得意な人がいたら、勉強会を開催してもらうのです。チーム内に広く呼びかけて、そのテーマに関心のある人に気軽に参加してもらうようにします。

 その勉強会の参加者は、自分ではイメージがつかない部分、わからない部分をメモしてくるように伝えておき、勉強会で質問します。

 たとえ1人ひとりは、自分が知りたいことに対する質問であっても、結局、誰もが聞きたい内容であることが多いので、参加している全員が勉強になるのです。

 そして、この勉強会のもう1つのメリットは、勉強会というかたちで、発表者と参加者が顔を合わせることです。

『残念なリーダーにならないための マネジメント50の心理法則』書影残念なリーダーにならないための マネジメント50の心理法則』(松岡保昌、岩渕美香、日本実業出版社)

 一度会ってお互いを認識できると、つながりができます。これが人的ネットワークです。この勉強会以降は、さらに個別に教えてもらうこともできますし、必要な際には相談に乗ってもらうこともできるでしょう。

 この勉強会は、先輩社員が若手社員に教えるという構造だけでなく、ある得意な領域のときには教える側、別の領域のときには学ぶ側として参加する。このように先生と生徒の関係が入れ替わりながら人的ネットワークが広がっていくのが理想です。

 たとえば、最新トレンドやSNSなど、新しいコミュニケーションの領域は、若手社員が先生役になったほうが効果的かもしれません。

 チームを強くするリーダーは、社員の知恵やスキルを最大限に活かす仕組みをつくっているのです。