子どもの成長の実感を
制服にポイントを絞って表現

堂真理子(テレビ朝日アナウンサー) 作
去年までぶかぶかだった制服が
はじけるボタン成長の春
――サイズに余裕を持って昨年新調した、娘の制服。気がつけば、ウエストのボタンがパツパツになっていることが発覚……。慌てて新しいものを購入しました。

 子どもの体が大きくなっている実感を、制服にポイントを絞って歌にしているのがいいですね。「はじけるボタン」というのも具体的で、単に「大きくなった」などとするよりも、本当に成長していることが生き生きと感じられます。

 去年との対比が、たった三十一音で的確に表現されていますが、ボタン、春、と体言止めが2ヶ所あると、重心が分散してしまいます。語順を入れ替えて「春」に重みを持たせてみましょう。

 去年までぶかぶかだった制服のボタンはじける成長の春

俵万智 作
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
『未来のサイズ』

 息子が中学校に入学したときに詠みました。中高一貫の学校だったため、同じ制服を6年間着ることになります。

 仕立てるときに、「いちばん成長する時期ですから、これくらいで大丈夫ですよ」と言われたものの、信じられないくらいぶかぶかでした。数年後にはこの大きさになるのだとしたら、これは「未来のサイズ」です。

 つまり、子どもたちは未来を着ているんですね。制服だけでなく、その未来が大きく豊かなものであってほしいと願わずにはいられません。

スシローの400円皿
そんなにたくさん取らないで……

野上慎平(テレビ朝日アナウンサー) 作
スシローで400円皿頼む子に
本心隠し笑うパパママ
――お祝いごとがあると、回転寿司に行きたがる子どもたち。「いっぱい食べていいからね!」と笑顔で伝えるものの、お高めの皿を選ぶとひそかにチラ見してしまいます。

 ユーモアがあるうえに、「400円皿」というのが具体的で、とてもリアル。「高い皿」とするよりも、情景が鮮やかに浮かび、「1、2皿ならいいけれど、そんなにたくさん取らないで……」という内心の声が漏れ聞こえてきます。

『みんなの短歌』書影みんなの短歌』(マガジンハウス、夫が寝たあとに、俵 万智)

「本心隠し」の部分が、やや説明的な印象を受けるので、次のように少し変えてみるのはいかがでしょう。

 スシローで400円皿頼む子をチラ見しながら笑うパパママ

 背景にあった「チラ見」という言葉がおもしろいので、借用しました。大人だから“ガン見”はしないけれども、こっそり見てしまう、というニュアンスにしたほうが、気にしながらも笑顔は崩さない様子が、読む側により伝わると思います。

 自身で書いた背景の部分には、短歌を推敲、つまり練り直すときのヒントが、実はたくさん詰まっているもの。ですから迷ったときは、第三者に伝えるために捕足としてまとめた言葉から拾ってみたり、入れ替えてみたりすると、自分なりの手直しになっていくと思います。

俵万智 作
運動会 走れるだけでいいという親はいなくて声援おくる
『オレがマリオ』

 親の本音という意味で、共通するかなと思いました。生まれたときは、息をしているだけでありがたかったですが、だんだん欲が出てきて、走れるだけでなく、どうせ走るなら速く……と願ってしまうのが親心だなあと感じます。