スシローの看板Photo:SANKEI

「ガチャガチャを見つける前に全力で通り過ぎる」「去年までぶかぶかだった制服のボタンがはじけそうになる」――。子育て中なら思わず「あるある!」とうなずいてしまう日常を、テレビ朝日のアナウンサーたちが短歌で表現した。“ママの本音”を語り合う人気番組「夫が寝たあとに」(毎週火曜 深夜0時15分~ ※一部地域を除く)で披露された作品を、歌人・俵万智さんが読み解く。親のハラハラや成長の喜びが凝縮された三十一音の世界とは。※本稿は、テレビ朝日「夫が寝たあとに」と歌人の俵 万智『みんなの短歌』(マガジンハウス)の一部を抜粋・編集したものです。

新しい足を手に入れた
子どもの高揚が伝わる

松尾由美子(テレビ朝日アナウンサー) 作
自転車に乗れる喜びどこまでも
並走母は翌日膝痛
――自転車に乗れるようになり、息子はあちこち行きたがるように。声かけしながら並走してますが、激走で膝が痛いです。息子は笑顔でどこまでも。置いていかないで~!

 上の句の「自転車に乗れる喜びどこまでも」は、「自転車」と「喜び」の両方が「どこまでも」にかかっているように読むことができます。つまり「自転車でどこまでも行く」と、「喜びがどこまでも続く」というふたつの意味になっていて、のびやかでとてもすてきな表現だと思いました。

 対して下の句は、オチみたいになっていて、落差がおかしくもあるのですが、ここはせっかくの上の句を生かしたいところ。たとえばどんな道を自転車で走っているのかなど、子どもに焦点を絞るのがよいと思うのですが、背景をヒントに下の句を作るなら、こんな感じでしょうか。

 自転車に乗れる喜びどこまでも息子の笑顔追いかけていく

 必死に並走しようとする母の様子も伝わりますよね。子どもを主体にして、作者である母が追いかけていることは、さらっと出すくらいのほうが上の句の魅力が引き立つと思います。もっというと「笑顔」や「追いかけていく」も「どこまでも」にかかって、この歌の真ん中にある「どこまでも」がさらに生きてきます。