内田裕也よりもロックな
マッチのやんちゃ伝説

 実は僕はアイドルなんて大嫌いだったんです。バンドマンだったから「やつらが日本をダメにする」と思っていました(笑)。トシちゃんみたいにダンスするならまだわかるけど、マッチは歌謡アイドルですしね。まさか自分がその歌謡アイドルと仕事するなんて思ってもいませんでした。

 でも、いざやってみたら、マッチは誰よりもロックでした。とにかく破天荒で、事務所の言うことも気にせずやりたい放題。僕が井上堯之さんの事務所にいたときに目にした、内田裕也さん周辺の日本のロックの人たちもすごかったけど、マッチのほうが全然ロックです。毎日「えーっ!?」みたいなことの連続でした。

 僕がついた頃、マッチは20歳そこそこでしょ。当然やんちゃ盛りですよ。具体的には言えませんが、モテ方もとんでもなかったし、とにかく忙しくて、ひと月前に曲を渡しても、スタジオに来るまで一度も聴いていないなんて当たり前。ひどいときはレコーディングを30分で終わらせなきゃいけないこともありました。

『ヒットのつくり方』書影ヒットのつくり方』(鎌田俊哉、アチーブメント出版)

 スタジオに来て「二日酔いなんだよ」と言うから、聞いたら前日の夜、ホテルのバーで飲んでいたら「近藤さん、どうぞこちらへ」と声をかけられて、言われるがままに座ったら司会が出てきて「それでは主演の勝新太郎さん、ご挨拶を……」って、映画の完成披露パーティだったんですよ。自分とまったく関係ない映画なのに、勝さんと大酒飲んでるんです(笑)。マスコミもいたけど記事は出なかった。勝さんの威信ですよ。かわいがられていたんですね。

 美空ひばりさんにも、歌番組のリハーサルのときに「おばちゃん、歌うまいね。なんて名前?」と言って、事務所のみんな真っ青になったけど、それからかわいがられて、巨大なダイヤの指輪をもらったりしてました。スター同士で通じるものがあったのかもしれないし、ひばりさんは人間として扱われて素直にほめられたのがうれしかったのかもしれません。

 でも、もし僕が同じことやれって言われても絶対にできません。マッチは天然もいいところ。天然はスターの要素。人に気をつかっているようではスターじゃないんです。