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 これによれば、16年3月期から26年3月期において、流動資産が約1兆1440億円、有形固定資産が約1兆9570億円、投資その他の資産が約2兆3460億円それぞれ増加している。

 また、固定負債は約2兆5310億円増加している。加えて、利益剰余金が積み上がったことで、純資産も約2兆7840億円増加した。

 このうち、固定負債が増加した理由は、中央新幹線建設長期借入金による資金調達(総額3兆円)だ。これは、17年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの財政投融資を活用した借り入れを行ったことによる。

 財政投融資を活用した借り入れとは、政府が発行した国債(財投債)による調達資金を元手とした、政府系金融機関などを通じて行われる融資を活用することを指す。当時のJR東海のニュースリリースによれば、この資金調達により経営リスクを低減するとともに、大阪までの全線開業までの期間を最大8年前倒しすることを目指すものとされていた。

 そして、こうして調達された資金は中央新幹線建設資金管理信託として流動資産に計上された。さらに、手元資金と財政投融資により調達された資金のうち、リニア建設に投じられた部分が建設仮勘定として計上されている。建設仮勘定とは、未完成の有形固定資産に対する支出額を計上する科目で、JR東海の建設仮勘定のほとんどはリニア建設に関わるものと推察される。

 では、投資その他の資産に計上されている金銭の信託とは何か。

 これは、リニアの工事の遅れに伴って計上された資産だ。先に述べたように、リニアの静岡工区では着工できない状況が続いており、本来であれば工事に投じられるはずだった資金が使用されていない。そのため、その余った資金を将来のリニア建設に充てるまでの間、金銭の信託として計上し、債券などで運用しているというわけだ。

 リニア建設に伴って行った財政投融資を活用した資金調達、リニアの建設に伴う設備投資、そしてリニア建設工事の遅れが、JR東海のB/Sを大きく変貌させたカラクリだったのだ。

 ここまでで、JR東海の業績の概要、B/Sに計上された資産と負債の中身、そしてリニア建設がJR東海のB/Sをどのように変貌させたのかについて見てきた。

 後編では、JR東海が過去最高益を生み出した儲けの仕組み、キャッシュの動きからわかるJR東海がリニアに投資できる理由、そしてリニア建設が将来の業績に与えるリスクなどについて解説していこう。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。X(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『決算書の比較図鑑『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。
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