日立は10年で株価5.6倍、パナは1.1倍…「株価の推移」で明暗分かれた理由とは?Photo:Smith Collection/Gado/gettyimages

日立製作所とパナソニックホールディングス、どちらも日本を代表する大手電機メーカーだが、ここ10年の株価の推移を見ると明暗がくっきりと分かれている。日立が順調に株価を伸ばしてきた一方で、パナの株価が伸び悩む理由とは何か。会計指標に注目して読み解いていこう。まずは両社の「成長性指標」の推移を分析していく。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)

株価に明暗が分かれた日立とパナ
パナは大型リストラを断行

 今回は、大手電機メーカーである日立製作所とパナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)の決算書を取り上げ、両社の会計指標を比較して分析していくことにしよう。

 まずは、両社の2025年3月期決算を見ていく。

 日立製作所は売上収益(売上高に相当)が約9兆7830億円、調整後営業利益(=売上高〔売上収益〕-売上原価-販売費及び一般管理費〔販管費〕、以下、営業利益と呼ぶ)が約9720億円、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、当期純利益と呼ぶ)が約6160億円で、増収増益となった。営業利益は過去最高を記録している。

 一方、パナソニックHDでは、売上高が約8兆4580億円、営業利益が約4670億円、当期純利益が約3660億円となり、売上高は減収、営業利益は増益、当期純利益は減益だった。

 加えてパナソニックHDは、25年3月期の決算発表と同時に、26年3月期から27年3月期にかけてグループ全体で1万人規模のリストラを実施することを発表した。これは、25年3月末の連結従業員数(20万7548人)の約5%に相当する大規模なものだ。パナソニックHDでは、営業部門や間接部門を集約し、事業の統廃合などを行うとともに、国内のグループ各社において早期退職を募る計画としている。

 日本を代表する総合電機メーカーである両社は、近年大規模な構造改革を行ってきた。その一方で、両社の株価の推移においては明暗が分かれている。