まとまった分量の文章を書くのは、いまではメールがいちばん多いでしょう。そういう意味では、うまいメールを書ける人こそ、出世する人です。仕事を任せられる人です。人は、人生のほとんどの時間を、仕事をして過ごしています。仕事が楽しい人は、すなわち、人生が楽しい人です。

 せいぜい、上手なメールを書かなければいけません。

文章で作家を口説き落とす
優秀な編集者のメール術

 さて、上手なメール(=手紙)を書く人とは、だれでしょうか。まず、編集者をおいてほかにありません。編集者とは、作家、ライター、記者と一緒に、書籍や雑誌、新聞を作る人です。

 作家やライターをピッチャーだとすると、編集者はキャッチャーです。そして、ピッチャーを生かすも殺すも、キャッチャー次第です。

 そのなかでも、本を作っている編集者はとびきり優秀なキャッチャーが多いです。なにしろ本を作ろうというのですから、相手は一流の作家やライターです。文章の練達の士です。その人に向かって、メールや手紙を書くわけです。文章によって、文章の達人を口説くんです。編集者の手紙が、下手なわけはありません。

 この本の編集Lilyとわたしは、初めて仕事をする仲です。最初にもらった仕事の依頼は、手書きの立派な書簡で、隅から隅まですきがなく、いかにも「できるな」と思わせるものでした。わたしが言うところの「3手詰め」になっていました。

 手紙でもメールでも、こちらが3手動かすことで、相手玉を詰まさなければならない。相手を口説き落とさなければならない。将棋では相手も駒を動かすので5手詰めといいますが、ここは便宜上、メールの3手詰めと名付けます。

メールを読んだ相手の
心を動かすコツ

1手目 自分はあなたを知っている

 なにをあたりまえなというなかれ。これが書けている人は、ほとんどいません。仕事を依頼する相手の本や記事、発言、相手が会社員ならば先方の仕事内容を知悉していて、しかも、ある程度の期間を継続して興味を持っていることを、具体的に知らせなければならない。

 依頼対象が忘れているような過去の仕事も含め、「あなたを知っている」と伝える。仕事を具体的にあげ、感銘を受けていることを、短くて的確な言葉で表す。