そんな親子関係において、大切にしたいのは距離感です。シンプルに、距離が近くなるとイライラする頻度は上がるし、遠くなれば自然と意識から外れていくからです。

 私は、親子関係に問題がある患者さんにはいつも「無理に会わなくていいんですよ」と伝えています。それでも、皆さん責任感があって優しいから、「いや、先生。どうしても定期的に会わなきゃいけないんです」「親に冷たくはできません」「年を重ねた親を放っておけません」と口をそろえておっしゃいます。

 でもね、それもある種の思い込みかもしれませんよ。あなたの人生なんだから、もっと自由に舵取りしていいんです。

 どうしてもそう思えないと言うなら、ものは考えよう。どうせ義務のようにして会っても、イライラしてきつい言い方をしてしまったり、口論になったり、冷たくしてしまったりするわけですよね?だって、その感情はコントロールできないんだから。

 でもそれって、親のほうも可哀想だと思いませんか?だったらいい距離感を保って、お互いにとってハッピーなつき合い方にする――。そんなふうに考えてはいかがでしょうか。

親孝行で不幸になるならなら
親不孝で幸せになろう

 会う回数を半分に減らす。電話は5分で切る。なるべく第三者を入れて話す。同じ空間にいるのは10分までと決める。

 そんなふうに、「心を乱さないためにはどれぐらいの距離感を保てばいいかな?」と考えて適切なルールを定め、自分と親のあいだに境界線を引いていく。よくも悪くも親子の縁ってしぶといものなので、思っているより太めの線をしっかりと引いていいと思います。

 ただし、ルールにはこだわりすぎず、臨機応変に。親子の相性自体はあまり変わることはないけれど、取り巻く環境や状況はどんどん変わっていきます。引越し、結婚、出産、親の定年、介護など、さまざまな出来事が襲いかかってくるでしょう。

 ですから、それぞれの変化に応じてどれくらいの距離感をキープするかは、こまめに見直す前提でいいんです。つまり、「一生、1回に10分しか会わない!」と決めつけるのではなく、「お母さんも施設に入ったし、上限を20分くらいに延ばしてみようかな」とその都度試していく。

『「幸せそう」にならなくて大丈夫』書影「幸せそう」にならなくて大丈夫』(精神科医さわ、光文社)

 それを実際にやってみて、「やっぱり20分は長かったわ……」と思ったら、また短く設定し直す。無理なく、フレキシブルに、です。

 親不孝ということばがありますが、親孝行するために自分が不幸になったら本末転倒です。親孝行で不幸になるくらいなら、親不孝で幸せになりましょう。

 たとえ「子どもは親の言うことを聞くべき」「この親不孝者め!」と思うような親御さんだったとしても、その考え方や感情は親のもので、親の問題なんですよね。だから、あなたが抱える必要はありません。

 あなた同様、相手もいいおとなです。あなたが担わなくても、自力で、あるいはあなたじゃないほかの人が幸せにしてくれますよ、きっと。