今の仕事が将来どこで役に立つのか、わからないまま続けている。そんな人は多いのではないだろうか。
サンダンス映画祭で、日本人初となるグランプリを獲得した映画監督・長久允さんは、学生時代から映画の道を夢見るも、32歳まではその夢を封じ、映像制作に携わるサラリーマンをしてきた。
『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓し、「あの時間があったから、今の仕事がある」と振り返る長久さんに、「解析中」という思考習慣について聞いた。(文/飯室佐世子)
Photo: Adobe Stock
Q. 嫌な仕事も、失敗も、
本当に無駄じゃないんでしょうか?
――長久さんは、「無駄な経験は一個もない」とよくおっしゃいますよね。
わかっているつもりではいるのですが、未来はわからないし、つい目の前のことを「無駄かもしれない」と感じて焦ってしまいます。
長久允氏(以下、長久):その瞬間は、そう思っちゃいますよね。こればっかりは結果論になっちゃうけど、でも僕は、本当に無駄なことはないなって思っています。
どんなに失敗したプレゼンも、負けたと感じた仕事も、なぜそうなったのか、何が失敗だったのかを考えると、全部体験として体に入っていくんですよね。
学びっていう言葉にするとちょっとダサいかもなんですけど、すべて食べられるものだなって思っていて。
――食べられるもの?
長久:自分自身の養分になるというか。なんか、ずっと「解析中」なんです、僕。
一個一個の事象について、「なぜこうなったんだろう?」と考える癖があって。それを続けていると、ある日ふと、「あの時こうしたから、今こうなったのか」と、点と点がつながる瞬間がある。
そこに辿り着くまでは、どの経験もずっと解析中なんです。
15年分の「やりたくない仕事」が、
世界一の映画につながった
――長久さんの経験で、後からつながったという瞬間を教えてもらっていいですか?
長久:サンダンス映画祭で受賞したデビュー作『そうして私たちはプールに金魚を、』がまさにそうで、「あの時の仕事で使った映像の技法が、このシーンにつながってる」って気づいた瞬間がありました。
15年間、作りたくないものを作ってきたと思っていたけれど、ちゃんと自分の体に入っていたんだなって。その時に本当に、無駄じゃなかったって実感しましたね。
――やりたくない仕事をしていた当時は、「いつか糧になる」ってわかっていましたか?
長久:いや、全然わかってなかったですよ(笑)。
事態を紐解きたくなる性分なのだと思うんですけど、思わぬところで役に立ったなって、これも後から気がつきました。
「解析中」でいると、何も無駄にならない
――反省とか振り返りじゃなくて、「解析」っていう表現は、初めて聞いた気がします!
長久:そんなにネガティブなことじゃないんですよね。
とはいえ、嫌だったこと、恥ずかしかったことの方が、解析した方がいいなって思うんですけど。
そういうのって、自分の中に嫌でも残るじゃないですか。本当は見たくもないんだけど、存在し続けている。それを「えいっ」って紐解いていく。
たとえば、「あの打ち合わせであの発言をしたからこの結果になってしまったのか」とか、「失敗したプレゼンは、この時点で上司に報告しなかったからこの結果になったんだな」とか。
解析してつながっていくと、なんか、楽になります。
――その力、ほしい! 大人になってからでも身につけられるでしょうか?
長久:できると思いますよ!
何か起きたときに、「なんでこうなったんだろう?」って一回立ち止まってみるだけでいいと思う。
うまくいったときも、いかなかったときも。いつか、点と点がつながる瞬間が来て、結局は「なんかよかったな」って消化できる瞬間が来るかもしれないから。
――そう思うと、今やりたくない仕事をしている人も、その先があるって期待できますね。
長久:あると思います。もちろん無理をしていい、ということじゃないですけど。でも、今やっていることが全部無駄だとは思わないでほしい。
捨てるところがないというか、食べられないものはない。すべてがあなたを作る素材になりますからね。
(本記事は、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の著者インタビューです。)







