スマホでSNSやAIを駆使した詐欺が急増している。被害者はネットリテラシーがあるはずの20~40代が多い。なぜ現役世代がカモにされるのか。その巧妙な手口について愛知県警に取材すると、詐欺というよりもはや洗脳に近い、恐ろしい実態が分かった。真相に迫る。【前中後編の前編】(フリーライター 杉山正博)

特殊詐欺は高齢者狙いから
「現役世代狙い」へ

 いわゆるオレオレ詐欺など特殊詐欺の被害者となるのは高齢者――。もしそう思っているなら、その認識は今すぐ改めたほうがいいだろう。今や特殊詐欺は「固定電話」から「スマートフォンの画面の中」へと移行し、SNSや最新AI技術を駆使した手口が主流になっている。

 それを裏付けるように、急増する「ニセ警察詐欺」では、20~40代が被害者の半数以上を占める。警察庁によると、2025年の特殊詐欺被害額は約1423億円。前年に比べて倍増しており、もはや誰もが被害者になり得る時代だ。

 SNS型詐欺の認知件数が全国ワースト1位と深刻で、最前線で捜査・対策を行なっている愛知県警察への取材を基に、巧妙な「だましの構造」と被害を防ぐためのポイントを探る。

「逮捕状」を突きつけられる!?
LINE通話「ニセ警察」とは

 ある日、30代の男性会社員のスマホに見知らぬ番号から着信があった。画面に表示されたのは「+」から始まる国際電話番号。不審に思いながらも電話に出ると、流れてきたのは機械的な自動音声ガイダンスだった。

「郵便局です。荷物に関する確認は、1番を押してください」

 指示どおりに押すと、「あなた宛ての荷物の中に違法な金品が発見されました。警察へ電話をつなぎます」と、警察官を名乗る女に代わり、女は厳格な口調で話し始めた。

「東南アジアを拠点とする大規模な詐欺事件の捜査で、あなた名義の口座が資金洗浄(マネーロンダリング)に使われていることが発覚しました。あなたには今、犯罪への加担容疑がかかっています」

 身に覚えのない男性が「そんなことはやっていない」と強く否定すると、女は「それなら身の潔白を証明するために、今すぐLINEでビデオ通話に切り替えて、捜査官の取り調べを受けてください」と指示してきたという。

 男性がLINE通話を始めると、画面の向こうには警察の制服を着た男が映し出され、「警察手帳」や「逮捕状」の画像を突きつけてきた。

犯行に使用された警察手帳を持つニセ警察官の画像犯行に使用された警察手帳を持つニセ警察官の画像(提供:愛知県警察)