違法な手段で保険の見込み客(リーズ)を集め、挙げ句に大量の早期解約を発生させ、生保3社が手数料詐取の被害に遭った事案が生命保険業界で話題となっている。そこで、連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、そのスキームを詳述する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
「無料で保険に入れる」と闇サイトで勧誘
保険の見込み客(リーズ)を大量発掘
多額の手数料詐取とみられる案件が、生命保険業界でひそかに話題となっている。「無料で生命保険に加入できますよ」――。こうしたうたい文句で保険の見込み客(リーズ)を大量に集める業者が、巧妙な手口を使った後に早期解約を多発させ、生保3社が多額の被害に遭っている。
通常、見込み客を集めるには、クレジットカードなどの顧客情報を活用したり、保険をテーマにしたアフィリエイトサイトで保険に関心のありそうな人を見つけたり、あるいは小さな子どもがいる家族に写真を撮るサービスを提供して、保険のニーズが高い子育て層を集めることなどで、保険の見込み客をつくりだすのが一般的だ。
かつては、「保険の相談(面談)をすると米アマゾンなどの商品券5000円分をプレゼント」といった集客手法が流行した。だが、保険業法300条で禁じられている保険料の割引や特別利益の提供に該当する蓋然性が高いとして、今では高額かつ換金性の高い手段を使った集客は禁じ手となっている。
むろん、「無料で保険に加入できる」というふうに、保険料を肩代わりして支払うことも同様に保険業法に抵触する。しかも、これらの見込み客の大半が、闇サイト経由で集められていたというから、タチが悪い。
そして、こうした手法で集めた見込み客が、新設して間もない小規模代理店を経由して大量に保険に加入し、しばらくした後に一気に早期解約となっている。早期解約となれば、保険会社は代理店に支払った手数料の返還請求(戻入)を行うが、ある理由から取りっぱぐれる事態に陥っている。
その理由とは何か。また、新設されたばかりの小規模代理店が大量の保険契約を獲得し、大量の早期解約に至ったことについて、なぜ保険会社は気が付かなかったのか。
次ページでは、くだんのリーズ業者が仕掛けた巧妙な手口を図解するとともに、被害に遭った生保3社についても解説していこう。