最初は旅行で日本を訪れ、街の清潔さ、治安の良さ、子どもが一人で通学できる社会環境に魅力を感じたという人も少なくない。また、中国の激しい受験競争を避け、子どもにもう少しのびのびした教育を受けさせたいといった思いから、日本で事業を始める決断をした家庭もある。

 彼らは日本語を学び、日本の文化や習慣を尊重し、日本社会に溶け込もうと努力してきた。だからこそ最近の空気の変化に、戸惑いを隠せない。

 ある中国人女性は、目に涙を浮かべながらこう話した。

「私たちは、ただ普通に暮らしたいだけです。日本で働き、税金を納め、子どもを学校に通わせ、地域の中で生活したい。それだけなのに、どうしてこんなに大きな不安を抱えなければならないのでしょうか」

「もし本当に日本が、真面目に暮らしている外国人まで受け入れない国になってしまったのなら、とても悲しいです。そこまでして日本に残る必要があるのかと考えざるをえません」

「日本の教育・医療にタダ乗り」
批判に在日中国人が思うこと

 最近、日本のSNSでは「外国人が日本の教育や医療保険にタダ乗りしている」といった声も目立つ。しかし、筆者が取材した在日中国人からは、まったく違う受け止めが返ってきた。

「病気になりたくて日本に来たわけではない」
「何年も病院に行っていないし、行ったとしても歯医者くらいだ」
「むしろ私たちは税金や保険料を納め、日本社会を支える側でもあるはずだ」

 そうした声である。

 もちろん、すべての外国人経営者が適正に事業をしているわけではない。不正な申請や実態のない会社は排除されるべきだ。そこに異論はない。

 しかし、制度悪用を防ぐことと、実態ある事業者まで萎縮させることは別である。

 報道では、「経営・管理」の新規申請件数が、厳格化前の月平均約1700件から、厳格化後には約70件へ減少したとも伝えられている(読売新聞 5月12日)。制度改正の影響は極めて大きい。

 前出の行政書士は、こう話す。

「制度改正後は、相談があっても、新規申請を受けるのが難しいケースが増えました。資本金3000万円や常勤職員といった要件は、小規模事業者にとって軽いものではありません。実態ある事業者まで日本を離れることになれば、地域経済にも影響が出るのではないかと心配しています」

 日本に必要なのは、制度の悪用を見逃すことではない。むしろ、不正は厳しく排除すべきだ。

 ただし同時に、すでに日本で事業を営み、税を納め、地域に根を張って生活してきた人たちについては、その実態を丁寧に見極める必要がある。

 制度の信頼性を守るための厳格化が、日本を信じて来た人たちの信頼まで失わせてしまうとしたら、それは日本社会にとっても大きな損失ではないだろうか。

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