スタートアップが成功できるか、失敗して消えてしまうか? それを決めるのは、Product Market Fit(PMF:プロダクト・マーケット・フィット/市場で顧客に愛される製品・サービスを作ること)を達成できるかどうかにかかっている。『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』(田所雅之著、ダイヤモンド社)は、起業家の8割が読み、5割が実践する起業本のベストセラー『起業の科学』を9年ぶりに大改訂した最新版。本連載では同書から抜粋して、スタートアップの成長を加速するポイントについて、わかりやすくお伝えしていきます。
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リーンキャンバスを利用する
アイデアをファウンダー自身、もしくはチームでブレストするときのヒントになる話を中心にしてきたが、このパートでは、実際にそのアイデアを形にしていく方法を説明する。
ここで多くのスタートアップのファウンダー(特に経営企画経験者)は、体裁を重視した事業計画書作りに入りがちだが、既に述べたように、事業計画書作りは、基本的に時間がかかりすぎる。
この段階でのアイデアはたたき台にすぎないのだから、今後、確実に変わっていくアイデアをきれいにまとめることほど無駄なものはない。
ここで必要になるのはPlan A。すなわち、初期の段階で最善と思えるビジネス仮説である(Plan Aはその後B、C、Dとバージョンが上がっていく)。
リーンキャンバスのメリットとは
では、どうやってPlan Aを形にしていけばいいのか?
私が最も効果的だと思う手法が、アッシュ・マウリャ氏が著書の『Running Lean』(オライリー・ジャパン)で提唱するリーンキャンバスである(図表1-4-2)。
スタートアップのビジネスモデルをビジュアル化するためのツールで、ビジネスシーンで多用されるツールのビジネスモデル・キャンバスから派生したものだ。
ビジネスモデル・キャンバスは、基本的にリソースがある大手企業が新規事業を検討するために最適なフレームワークであり、リソースの少ないスタートアップにはあまり重要でない項目がある。
たとえば、ビジネスモデル・キャンバスの項目「キーパートナーズ(KeyPartners)」はスタートアップが、そこまで重視する必要はない(パートナー経由で販売するより、スタートアップは直接顧客と話す必要がある。パートナー経由だとプロダクトにパートナー企業の色がついてしまい、スケールするときの足かせになりかねない)。
その点、リーンキャンバスはスタートアップにとって、特に重要な項目であるカスタマー、課題、プロダクトにフォーカスできるように設計されている。
そして何より、誰でもすぐに理解して短時間で書くことができる。非常にシンプルなので5分で理解でき、10分もあれば書けるはずだ。
事業計画書の作成に2ヶ月を費やすなら10分で書けるリーンキャンバスを何百回も書き込むほうが、はるかに効果がある。
リーンキャンバスは、下図のような順番で各セグメントを埋めていく。
メンバーがチームで動いているスタートアップへのお勧めは、ホワイトボードなどにリーンキャンバスを書き出す方法だ。
各項目の内容は付箋などに書いて貼っていく。そのほうが結果が目に見える形で残るし、メンバー間で目標を共有しやすいからだ。
次回から、さらに詳しい解説をしていく。
(本稿は『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。
2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』『「起業参謀」の戦略書』(ダイヤモンド社)など。





