trickster / PIXTA
ブランドとCX(顧客体験)は、顧客の感情の記憶を巡る一つの営みである。本連載では、そう論じてきた。では、その二つを現場で一体として動かすには何が必要なのか。鍵になるのは、パーパスからブランドプロミス、CXビジョン、行動原則までを貫く1本の線である。この線が切れていると、現場の判断は揺らぎ、顧客の感情の記憶も揺らぐ。デジタル空間が広がる今、その揺らぎは以前よりも速く、はっきりと顧客に届く。
パーパスはなぜ現場の施策に落ちないのか
あるCX関連のプロジェクトの打ち合わせで、担当者に尋ねました。
「このプロジェクトは、御社のパーパスとどうつながっていますか」
担当者は、少し考えてから言いました。
「パーパスは経営企画部門が扱っていますので」
この一言に、ブランドとCXが一体化しない理由が表れています。
パーパスはある。ブランドプロミスもある。CXの施策も動いている。けれど、それらは現場の判断の中で1本につながっていない。経営層が語る言葉と、現場で進む施策が別々の論理で動いているのです。
なぜ、このずれは生まれるのでしょうか。今回は、その理由を掘り下げます。
バラバラに作られた似たような言葉たち
パーパス、ミッション、バリュー、ブランドプロミス、CXビジョン、行動原則・デザイン原則。組織の中には、方針のような言葉、ルールのような言葉、キャッチコピーのような言葉、コンセプトのような言葉があふれています。
一つ一つを見ると、どれも間違ったことを言っているわけではありません。むしろ、それぞれの部門や目的に照らせばよく考えられた言葉です。しかし問題は、その作られ方にあります。別々の場所で、別々の論理によって作られた言葉が、経営から現場までを貫く1本の線としてつながっていないのです。
企業の中では別々の仕事として成立していますが、顧客は部門ごとの事情を分けて受け取ってはくれません。ある場所で期待を抱き、別の場所で違和感を覚えれば、それは一つの体験として記憶されます。
にもかかわらず、企業はそのずれが「悪いCX」につながるものと捉えていないことが少なくありません。それぞれの部門では、正しい言葉を作り、正しい施策を進めている。だから問題はないように見える。しかし顧客の感情の記憶の中では、その不一致こそが体験の質を下げています。







