私たちは彼の考えをよく理解する必要がある。

 そうすれば、自分自身の行動によって生じるリスクや、多くの人が陥りがちなミスを避けることができるからだ。

不完全な情報で
確信を持ってしまう

 投資や人生は、ミスへの誘惑に満ちている。だからこそ、カーネマンの『ファスト&スロー』は投資で成功するための必読書なのだ。

 次に示すのは、カーネマンら行動経済学者が指摘する、投資家が避けるべき行動だ。

●結論を急ぎすぎる

 中途半端な知識は、特に投資において危険だ。個別株を売買するとき、多くの人はわずかな情報だけを頼りに判断している。そして大抵、第一印象に振り回される。

●無関係な情報に引きずられる

 判断ミスや誤解の典型例が、『ファスト&スロー』に紹介されている「リンダ問題」というケーススタディーだ。

 この「リンダ問題」に登場するリンダは31歳の独身女性で、率直な性格で、哲学を学び、差別や社会的不平等の問題に関心があり、反核運動のデモに参加したことがあるという設定だ。学生たちはその情報をもとに彼女に関するいくつかの説明文を、可能性の高い順に並べるように指示される。

 選択肢のうちの二つは「リンダは銀行の窓口係だ」「リンダは銀行の窓口係で、フェミニズム運動に熱心だ」というものだった。

 調査の結果、二つ目の文章は一つ目の文章より可能性が低いにもかかわらず、85%の学生がこれを選択した。この「リンダ問題」は、投資においても人が無関係な情報に惑わされやすいことを示すものだ。

人の判断力を鈍らせる
行動経済学が示した“心のクセ”

●可能性よりも、確実なことを好む

 例えば、「確実に得られる50ドルか、50%の確率で得られる100ドルか」という選択をする場合、多くの人は確実な50ドルのほうを選ぶ。だが、実際の期待値に両者の差はない。

●「平均への回帰」を無視してしまう

 1886年、統計学者のフランシス・ゴルトンが発見した「平均への回帰」の法則は、市場価格の動きを理解する上で極めて重要な事象である。

 その実例として挙げられるのが、「高身長の両親の子も両親ほど背が高くならないことが多く、低身長の両親の子も両親より背が低くなることは少ない」というものだ。