なぜなら、本当に投げたほうはそれほど無作為には見えないからだ。実際には私たちが考える以上に、「表」と「裏」のどちらかが続くことが多い。要するに、私たちは「無作為」を実際よりはるかに「無作為」だと考えているということだ。

 では、次のどちらが実際にコインを投げた結果を示しているだろう?

a.表 表 表 表 表 表 表
b.表 裏 表 裏 裏 表 裏

答え:どちらでもない

 人は、意味がないものに意味を持たせようとする。法則性など存在しないのに、自分は法則性を見出せると思い込む。

 多くの投資家は次のように考える。

「昨日は値下がりしたから、今日こそ値上がりするだろう」「昨日上がったから、今日もまた上がるだろう」

 株式市場のランダムウォーク〔株価の将来の動きは過去の動きからは予測できないこと〕を受け入れることは容易ではない。

 だから市場には法則性など存在しないにもかかわらず、多くの人が法則性を見つけた気になってしまうのだ。

カーネマンの重要な忠告
「人は間違えるものだ」

 カーネマンの指摘するこうした人間の特徴的な行動は、投資だけでなく、人生にも重要な忠告を与えてくれる。

『チャールズ・エリスの超長期投資入門 「お金」の不安を安心に変える法則』書影チャールズ・エリスの超長期投資入門 「お金」の不安を安心に変える法則』(チャールズ・エリス著、鹿毛雄二+鹿毛房子訳、日経BP)

 カリフォルニア大学デービス校の行動経済学者、テランス・オディーンとブラッド・ベーカーは、1991年から6年間にわたり、投資家の6万6000件の口座の動きを分析し、人間の犯しがちなミスによって投資成績が低下していることを最初に発見した。

 この間、市場は17.9%値上がりしたが、投資家の成績は平均して、市場より6.5%も下回っていた。彼らの研究によると、その後の安定相場においても、投資家の成績は市場を2~3%下回っていたという。

 市場リサーチ会社のダルバー社は「2023年の投資家の株式投資平均リターンはS&Pより5.5%低かった」と報告している。20年以上の期間で見ても、年間の平均的な不足額は2%強だった。

 行動経済学の考え方をすべて理解する必要はないが、人間はえてして間違えるものだと覚えておこう。

 そうすれば、平凡なインデックスファンドを持ち続けながら、行動経済学者が指摘するような間違いも避けられる。