単なる数値のはずが
大学の評価指標に

 このような状況が生じる背景には、就職率という数値が、大学の評価指標として強い影響力をもっていることがあります。大学の広報では「就職率」が魅力として大きく扱われ、入試案内やパンフレットでも目立つ位置に掲載されます。保護者や高校生にとっても、大学を選ぶ際のわかりやすい指標となります。こうして、もともとは学生の進路状況を把握するための単なる数値が、大学経営や社会的評価の尺度として機能しはじめるのです。

 その結果、制度全体が少しずつ形を変えていきます。数字が評価の中心になると、大学の内部でも教員や職員の関心は「どのように学生を支援するか」から「どのように数値を守るか」へと移っていきます。制度が目指していた目的である、学生が自らの将来を見つめ、自分に合った進路を選ぶための支援は、いつのまにか「高い就職率という成果をもたらす制度を維持すること」へと変化していくのです。

合格率が学校評価に
直結すると何が起きるのか

 資格取得を目指す大学や専門学校では、資格試験の合格率が大学や学校の宣伝になり、受験生にとっても重視すべき情報となります。「合格率○%」という数字は、学校のパンフレットやウェブサイトに大きく掲載され、受験生や保護者が学校を選ぶ際の判断材料にもなります。そのため、多くの学校にとって、合格率を高めることは大きな関心事となっています。

 資格取得率や合格率を高めようとすること自体は、決して悪いことではありません。学生が試験に合格し、将来に必要な資格を取得できるよう支援するのは、教育機関として当然の役割です。けれども、合格率という数値が学校の評価や評判に直結するようになると、制度の運用そのものが次第に「数字を守る」方向へと変わっていきます。

 資格試験の合格率は一般的に、「受験者のうち合格した者の割合」を指します。しかし、この「受験者」は、在学生全員を意味するとは限りません。