フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

荷物を載せてほとんど毎日超・長距離移動するトラックや、工場や現場の間を数え切れないほど往復するダンプカー……「働くクルマ」は想像以上に重い荷物を積んで長距離を走るため、タイヤの交換サイクルは乗用車よりも早くなり、タイヤ代も乗用車の比にならないほど高い。タイヤ代はそのまま会社の収益を左右するのです。実は大型トラックの世界には、新品よりも安く、しかも環境にも優しいタイヤが存在します。しかし日本での普及率は約2割、米国の半分以下なのだとか。そんな「いいもの」がなぜ広まらないのか?「エコなタイヤ」の製造現場を見学してきました。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

ベトナム名物、線路の上のカフェで起きた事件

 みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。
 今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。

 先週のベトナム旅行記でチラッと触れたトレインストリート。昨今は観光名所として知られていますが、単なる観光列車でも、またテーマパークのアトラクションでもありません。ベトナムの大動脈である南北統一鉄道の現役路線なのです。

列車が通らない時間はごらんの通り、線路上を自由に歩けたり、商魂たくましい物売りが行き交ったりしています列車が通らない時間はごらんの通り、線路上を自由に歩けたり、商魂たくましい物売りが行き交ったりしています Photo by Ferdinand Yamaguchi

 線路脇のカフェでビールを頼み、ボンヤリ飲んでいると、店員さんがやおらレールの上に王冠を置き、「カメラ!カメラ!」と叫びます。そして「列車が来たら面白いものができるわよ」とウインクします。

レールの上に置かれた王冠レールの上に置かれた王冠。日本なら間違いなく捕まります(笑) 写真:店員さん 拡大画像表示

 しばらくすると、列車が小走り程度の超スロー運転でやってきます。係員なのでしょうか、ラフな格好のおじさんがピーピー笛を吹き鳴らし、線路上の人々に退避を呼びかけます。列車は我々の目の前を(本当に目の前で、手を伸ばせば車体に触れることが出来ます)掠めるように通り過ぎます。

小走り程度の速度で走る南北統一鉄道の列車小走り程度の速度で走る南北統一鉄道の列車。手を出す人が多く、警笛を鳴らしまくっています Photo by F.Y.
通過する列車の車体を栓抜きでコンコン叩く店員さん通過する列車の車体を栓抜きでコンコン叩く店員さん。いやもう何でもアリです…… Photo by F.Y.

 線路に置いた王冠は見事にプレスされています。そして「はいこれ。ハノイの土産よ。ビールのおかわりはいかが?」と。こうなると無下には断れません。我々も笑顔で追加のビールを注文したのでした。まだ昼前なのに。

線路上で、見事にプレスされた王冠線路上で、見事にプレスされた王冠 Photo by F.Y.

南北統一鉄道とは何か

 南北統一鉄道は、フランス植民地時代に建設され、戦争によって何度も寸断されながらも復活した鉄道です。1975年のベトナム統一後、北のハノイと南のホーチミン市を再び一本の線路で結んだことから、「統一」の名が付いたそうです。ベトナム人にとっては単なる交通機関ではなく、国家統一の象徴でもあるわけです。

 日本なら国交省、鉄道会社、警察、自治体が集まって対策会議を開き、停止命令が出されそうな光景ですが、彼の地では国家の大動脈と人々の生活と商売が、わずか数メートルの幅の中で共存しているのです。ああベトナムはたくましい。

 という訳で本編へと参りましょう。

 今回お届けするのは、昨今話題のリトレッドタイヤ工場見学記であります。