「組織に違和感を感じるとき、マネジャーが最優先でやるべきこと」をテーマに、勅使川原真衣氏と中谷公三氏・諸橋峰雄氏・水野ジュンイチロ氏の対談が、代官山 蔦屋書店で開催されました。本記事では、大充実の内容となった当日の模様を抜粋してお届けします。(構成/ダイヤモンド社・大西志帆)

Googleには本当に「何でも言える文化」があったのか
勅使川原真衣(以下、勅使川原) よろしくお願いします。今日はGoogleさんの働き方をたっぷり聞かせてください!
中谷公三(以下、中谷) はい、よろしくお願いします。たくさん話しましょう。私はGoogleに9年弱在籍していました。
諸橋峰雄(以下、諸橋) 私は5年ぐらいですね。みんな同じ部署で、上下関係だったという。僕は公三さん(中谷)の部下でした。
水野ジュンイチロ(以下、水野) 僕が一番下で、Googleには新卒で入って12年になります。途中からはマネジャーもやらせていただいていたので、一応語る資格はあるんじゃないかと思ってこの場におります。
勅使川原 そうだったんですね。
これまでさまざまな組織を見てきた中で、どうしても、違和感っていうのはもやもやと積み重なってしまうものだと思っていて。
それを起点に『組織の違和感』(ダイヤモンド社)を書いたのですが、皆さんの本『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)には、Googleさんは「文句含め何でも言える組織」と書いてありましたよね。
『組織の違和感』(ダイヤモンド社)、『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
勅使川原 いやぁ、ちょっとだけ嘘くさいなと思ってしまって。違和感ってそんな言える? と思っているんですけど、どうでしょう。
中谷 じゃあ水野さん、どうぞ。
水野 はい。私は言ってたと思うし、言われてました。
うちのメンバーはみんな自己主張が激しくて、私のことを一切気にせずバンバン言ってくるので。
中谷 それは、3人とも共通の体験ですね。部下にボコボコにやられるっていうのは、入社して最初はすごくへこみます。
諸橋 Googleはとにかくそこは言う/言われるの文化だったなと。下からも上からも言われるというのはあります。
仮に下の人が直接言えなくても、スキップしてさらに上に言うんですよ。そうすると上から落ちてくるんですね。
半年に一回、マネジャーフィードバックもあって、これがまた結構辛辣な言葉が書いてあって、それがマネジャーの評価にものすごく響くんです。
中谷 でも中途で入ってくる人には、空気を読んだり、言っていいのかと思って言わない人が多いから、言えなくて、ドツボにはまっていく。
だからこちらが気をつけて、「いや、本当は何か思ってるでしょ? 言ってください」と声をかけていかないといけなかったですよね。
Google式はアメフトにも通ず?
勅使川原 そうなんですか! 失礼いたしました。素晴らしいですね。
皆さん見てのとおり、ジュンさん(水野)ってでっかいじゃないですか。私も最初お会いして「でか!」って言っちゃったぐらい、強そうだなと思って。実際スポーツの世界でご活躍されてて。
水野 はい、アメフトをやってました。
勅使川原 体育会アメフト部でやられてきて、それってわかりやすい能力主義社会ですよね。強い者が勝つという。
それでGoogleという会社に新卒で入って、何かギャップであるとか、実は一緒なんだなと思う点とかってありますか?
水野 そうですね。たぶん、アメフト部って皆さん想像するものとあんまり変わらないんですよ。ビシビシ成果主義で、勝った負けたの世界なので。上下関係ありますよっていうのも当然なので。
でも思い返すと、Googleのやり方でアメフトやっても良かったんじゃない? と思うんですよね。みんなの意見を聞く、信頼して任せるとか、そういうことの蓄積で組織を回しても良かったんじゃないのって。
だから、やっぱりGoogleの方法はいいなと思いますよね。
ただ、やっぱり裏にどこかちらつくのは、そうは言っても営利企業なので、成果主義の側面もあるわけですよね。そこと完全に切り離すわけにもいかないから、そこをどう両立させるか。それが難しいバランス感だなと思うんですよね。
勅使川原 そこはすごくわかる気がしました。私の本を読んでくださった方にたまに言われてしまうのが、「勅使川原さんって優しい人なんですね」みたいなことなんです。
優しいんじゃないんですよね。どちらかというと、曖昧さを残して個人に押し付けるようなことの方が、私は優しくないことだと思っているので。
組織の中でキャラを立たせる
勅使川原 その意味では、皆さんの本との共通点でもあるんですけど、「決めること決めましょう」と。明確にすべきことは明確にして、「察しろ」とか「わかる人だけうまいこと言え」じゃなくて、「普通に聞けばいいし、普通に言おうよ」という話を書いてらっしゃるような気がして。
水野 できない人が多いんですよ。言うということが。
勅使川原 できない以前に「やっちゃダメ」って言われてた記憶が。私、もう小学校のときからガチで先生に嫌われたんですよね。疑問に思ったこととか何でも聞いちゃうし、おかしいと思ったら言っちゃうから。
そんなこと全然奨励されてなかったし、「空気を読め」とか「皆まで言うな」とか言われていた社会なので。
だからGoogleに入ったらみんな言えるようになるというのは、すごいことですよね。
中谷 でも、「はい、じゃあ今日から言ってください。どうしたいですか?」となった時に、最初はみんな固まりますね。
それで「どうしたらいいか教えてください」と言われても、「いやいや、僕らの期待値もあるけど、まず自分は何をしたいか、何ができるか、どうしたい?」って返す。その問答が3か月から半年続きますね。
勅使川原 なるほど。半年あると人ってある程度できるようになるんですか?
中谷 ネオさん(諸橋)どう思います?
諸橋 結構、しつこくやると変わってくるとは思いますね。
勅使川原 繰り返し。
中谷 言えないというのは、おそらく言語化する経験をあまりしてこなかったというのもあると思うんですよね。
だから例えば、その人の「スーパーパワー」、勅使川原さんの言葉で言う「持ち味」を探すということをやるんです。一人ひとりに対して。
「何したい?」「わかりません」みたいな漠然とした会話をするんじゃなくて、「今までの仕事でどんな時が一番楽しかったか」や「どんな時に達成感を感じたか」を聞くんですね。そこから、その人なりの仕事の仕方や対人関係の持ち方をベースに、その人のキャラを立てていく。
組織の中の一人一人のキャラ立ちをサポートする。そういうことをやらないと、なかなか人は育ちませんね。
勅使川原 戦略的にジョブローテってされてるんですか? Google社は。
中谷 ジョブローテはあまりなくて、基本は社内公募なんです。
だから、マネージャーがちゃんとしてないとみんな逃げ出すんですよ。部下がいなくなっちゃうんです。
ポジティブな意味で異動する人もいれば、「この上司嫌だから」と移る人もいる。その時に上司の承認はいらないんですよ。「2週間後から別の部署行くんで。ありがとうございました」って。その意味では厳しいですよね。
勅使川原 そうなんだ。じゃあメンバーの頭数もマネージャーの評価になるんですか?
中谷 そうですね、減ったらその分採用して、というのをやらなきゃいけない。
勅使川原 お疲れ様です。ほんと大変だ。
「変われること」が価値
中谷 今日一個言おうと思っていたのが、組織ってやっぱり生き物だと思っていて。
いいチームでいいパフォーマンスが出て、めっちゃいい状態って、体感としてはもって3か月なんですよね。みんなで「あぁ~良いチームだなぁ」と思える瞬間は。
ある人が抜けてパフォーマンスが落ちたり、すごいわがままな人が入ってきたり。でもそれでももう一回仕切り直して、関係性を作り直して。必ずアップダウンってあるじゃないですか。
そこをできるだけうまく収めつつ、リスクを減らして、全員に登板して打席に立ってもらうというのをやらなきゃいけない。組織をずっと見続けなければいけなくて、ワンタイムのソリューションはないと思うんですよね。それはすごい生き物だなって。
勅使川原 めちゃめちゃそう思います。時間がかかり、かつ成果がわかりにくいものに対する向き合い方ですね。
中谷 ひとつは、「変化をすること」を重視しますよということを明確にした方がいいだろうと思うんです。
実は、ジュンさん(水野)をマネジャーに推したのは、彼が一番変わってきたからなんです。
勅使川原 そうなんですか。
中谷 1on1をやって、ここはこうした方がいいんじゃないかって指摘したら、絶対次には変えてくるんですよ。
常に変化し続けてて。打てば響くところがすごくいいですよね。
諸橋 それは「聞く耳を持つ」ということと、聞いたことをすぐアクションに起こすということですよね。
自分が成長していると感じる人って、フィードバックが大好きなんですね。ジュンさん(水野)もそうで、「厳しいフィードバックもどんどんしてください」とずっと言っていて。聞いたことは次のアクションに落としていく。
そのサイクルが早ければ早いほど、失敗しながら学んで、新しいものを身につけられるんですね。
勅使川原 あと、「こうあったらいいのに、うまくできないな」も含めて、私は相互変容だと思っています。試行錯誤しているということが、実は組織開発であって、結果だけじゃなくて、プロセスそのものに人生の価値を置くというのがミソなので。
中谷 どんな立場でも、自分の意見をちゃんと持ってもいいんだよってことはちゃんと言いたいですね。
まあ最初はね、「Google」とか「圧倒的成果」って言葉に引っ張られて本を買っても、読み終わったときにそれが残るといいなっていう気はしますよね。
勅使川原 残りましたよ。
中谷 良かったです。
勅使川原 多くの方がたぶん、「あ、私間違ってなかったんだな」って思う本なんじゃないかなと思って。悔しいです。
中谷 なんで悔しいんですか。(笑)
(終わり)






